「バイクの音、1日3回は通るのよ」近隣住民との世間話。だが、気づいた時にはクレーマーに仕立て上げられていた
世話好きな人の相談ごと
近所の女性は、根っから世話好きな人だった。
ある朝、私が庭先にいると、垣根ごしに声をかけてきた。
「バイクの音、1日3回は通るのよ」
近ごろ向かいに越してきた若い夫婦が、旧車のバイクを走らせている。
彼女はそれが気に障るらしかった。
私も音そのものは知っていたが、窓を閉めれば済む程度で、目くじらを立てるほどではない。
それでも、真っ向から言い返して機嫌を損ねるのも面倒だ。この人と正面からやり合っても、いいことは何もない。
私は当たり障りなく「気になる方は、落ち着かないでしょうね」と受け流した。
ほんの相槌、その場をおさめるためのひとことのつもりだった。
彼女は「そうよねえ」と満足げにうなずいて、その場を離れていった。
私は特に気にも留めず、庭仕事の続きに戻った。まさか、この何気ないやりとりが、面倒ごとの火種になろうとは、このとき思いもしなかったのだ。
50代の男が解いた一言
ところが数日後から、若夫婦の様子がおかしくなった。すれ違っても目を合わせず、こちらの挨拶にも短く返すだけ。
以前の気安さが、すっかり消えている。
訳を知ったのは、顔なじみの隣人からだった。あの近隣の女性が町内会長のところへ出向き、「バイクの音で眠れない人がいる。
越してきた若夫婦に注意してやってほしい」と頼んだのだという。
そして、その"眠れない人"が、なぜか私ということになっていたらしい。ただ相槌を打っただけの私の言葉が、人づてに伝わるうちに、いつのまにか「苦情」へと化けていたのだ。
五十を過ぎて、身に覚えのない陰口の主に仕立て上げられるのは、さすがにこたえた。
このまま黙っていれば、若夫婦には陰で悪口を言う嫌な隣人だと思われ続けるだろう。事態はこじれる一方だ。
私は腹をくくり、若夫婦の家のインターホンを押した。
出てきた夫に、私は順を追って説明した。自分は苦情など口にしていないこと、世間話がねじ曲がって伝わったであろうこと。
彼は半信半疑の顔をしていたが、最後には肩の力を抜いた。
「実は、急に注意されて、何が悪かったのかと悩んでいたんです」
そう打ち明けてくれた。私はあらためて行き違いを詫び、彼のほうも「夜遅い時間は気をつけます」と歩み寄ってくれた。
後日、近隣の女性にも角の立たないよう事実を伝え、伝言の食い違いを正しておいた。
おかげで、若夫婦とはかえって親しく口をきくようになった。面と向かって話す、ただそれだけのことが、こじれかけた縁を結び直してくれたのだった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














