「後にしろ、今はスマホ見てるから」子供よりもスマホゲームに夢中な夫。だが、子供の一言に思わず目を逸らした
画面から離れない父親
結婚して6年、夫の評判はすこぶるいい。
公園で会うママ友には「優しいパパだね」と言われ、友人の集まりでは息子を肩車して回る。人前での夫は、絵に描いたような子煩悩だ。
けれど家の中で、その姿を見たことがない。帰宅すればソファに座り、あとはひたすらスマホの画面を眺めている。5歳の息子がミニカーを差し出しても、返事は決まっていた。
「後にしろ、今はスマホ見てるから」
「いつ?」
「あとで」
その「あとで」が来たことは、たぶん一度もない。息子は最初こそ何度も誘っていたが、最近は誘う回数そのものが減った。
代わりに「ママ、遊ぼ」と私の袖を引く。
「たまには相手してあげてよ」
「俺、外ではちゃんとやってるじゃん」
夫にとっての父親業は、人に見られている時間だけのものらしい。月に8,000円のゲーム課金が、息子の「遊ぼ」より上に置かれている。
義父母の前で漏れた本音
その月末、義父母の家に家族三人で顔を出した。
玄関を入った瞬間から、夫は別人になる。息子を抱え上げ、庭で鬼ごっこをして、居間では四つん這いになって馬になった。義父母は、その様子を嬉しそうに眺めていた。
お茶を出しながら、義母が言った。
「よく遊んでくれる、いいお父さんになったねえ」
義父も大きくうなずいた。
「昔のお前からは、想像もつかんな」
夫が得意げに笑った、その横で。息子が座布団の上から、けろりとした顔で言った。
「パパはお家では遊んでくれないよ、携帯ばっかり触ってるから」
空気が止まった。
夫の笑顔が、そのまま固まる。義母が湯呑みを持つ手を止め、義父がゆっくりと夫のほうを向いた。
「いや、あの、それは、仕事の連絡もあるし…」
慌てて言い訳を並べようとして、途中で言葉が続かなくなる。誰も助け船を出さなかった。夫は膝の上で手を握ったり開いたりしながら、義父から目を逸らした。
義父が、短く言った。
「見栄で子育てはできんぞ」
夫はうつむいたまま、何も返せなかった。義母が「あらあら」と場をとりなしても、その日の夫はもう、一度も息子を馬に乗せなかった。
帰り道、夫はずっと黙っていた。駐車場に着いてエンジンを切ってから、ようやく口を開いた。
「……明日、あいつと公園行っていいか」
「私に許可を取ることじゃないでしょ」
翌朝、夫は自分から息子を起こしに行った。あれから、家のソファでスマホを触る時間は目に見えて減っている。息子が「パパ」と呼べば、今は画面を伏せて顔を上げるのだ。
外での子煩悩は、ようやく本物になりつつある。あれだけ言っても動かなかった夫を、息子はたった一言で動かしてしまった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














