「予定通りにいかなくてよかったかも」順番を間違えた新郎の祖父→予定外のハプニングが招いたのは
ケーキ入刀のあとで
親戚の結婚式に出席したときのことです。
新郎は私の親族にあたり、その門出を祝おうと、たくさんの人が会場に集まっていました。
披露宴は和やかに進み、いよいよケーキ入刀の場面を迎えます。
まぶしいライトの中で二人がナイフを入れると、会場からは大きな拍手と歓声が上がりました。
その余韻が残る中、私はテーブルの料理に箸をつけながら、隣の親戚と談笑していました。
会場はすっかり寛いだ空気に包まれています。次は誰の挨拶だろうか、と何気なくプログラムを眺めていたのです。
順番を間違えて
ところが、司会者が次の案内を告げるより先に、新郎の祖父が席を立ちました。
どうやら自分の出番だと思い込んだらしく、まっすぐにマイクへ向かっていきます。
そして、まるで用意していたかのように、マイクを勝手に握りしめて話し始めたのです。
予定にない飛び入りに、会場は一瞬、しんと静まり返りました。
新郎はあわてた様子で、けれど祖父を止めることはしませんでした。
おじいちゃんの好きにさせてあげよう、とでもいうように、そっと見守っています。
司会者も、無理に遮ることはせず、マイクから流れる声にそっと耳を傾けていました。
私も、この先どうなるのだろうと、思わず身を乗り出したのを覚えています。
式のハイライトに
祖父が語ったのは、新郎が小さかった頃の失敗談や、家族で過ごした何気ない日々のことでした。
飾らない言葉のひとつひとつに、聞いている人たちの頬がゆるんでいきます。
気取らない語り口が、かえって胸に届いたのだと思います。
やがて話が新郎への感謝に及ぶと、会場の空気が変わりました。
笑っていたはずの人たちが、いつのまにか目頭を押さえています。
新郎新婦も、こらえきれずに涙を流していました。
祖父が話し終えると、大きな拍手がいつまでも鳴りやみませんでした。
その日の披露宴を振り返って、私はこう思ったのです。
「予定通りにいかなくてよかったかも」
本来なら、段取り違いのハプニングです。それなのに、あの飛び入りのスピーチこそが、まぎれもなくその式のハイライトになりました。
予定通りにいかないことが、こんなにも心に残る瞬間を生むとは思いませんでした。祖父の勘違いが、誰の記憶にも忘れられない一場面を届けてくれたのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














