「親戚なんだから、そこまで言わなくてもいいだろ」30万円を貸した私。だが、催促出来なくなったワケ
「来月には」を3度聞いた
約束していた半年が過ぎたころから、私はカレンダーに小さな印をつけるようになった。
最初の印をつけたのは、初めて返済の話を切り出した月の末だった。
「返済のこと、そろそろ聞いてもいいかな」
「今月は厳しいから、来月には返すよ」
その翌月にも、同じように連絡した。
「もう少しだけ待ってほしい。来月にはまとめて返すから」
さらに次の月、三度目に返ってきた言葉もほとんど同じだった。
「来月には、必ず」
数年前、私はその親戚に30万円を貸していた。
急な出費が重なって生活が苦しい、半年くらいで少しずつ返すから助けてほしい、と頼まれたからだ。
身内だからと借用書は作らず、口約束のまま封筒を渡した。
けれど半年を過ぎても、返済は一度も始まっていなかった。
印が三つ並んだころ、友人にその話をした。
「返せないなら返せないで、予定だけでも話してほしいよね」
「そうなんだけど、親戚だから強く言いにくくて」
自分でも、それがいちばん困っているところなのだと分かっていた。
親戚の集まりで見た、あの日の顔
その年の秋、法事で久しぶりに顔を合わせた。
相手は受付を手伝っていて、親戚が来るたびに頭を下げていた。
私の番になると一瞬だけ目が合ったが、交わしたのは「元気だった?」という短い挨拶だけだった。
会食の席では、同じ卓にいた人がスマートフォンの写真を見せていた。
その中に、海の見える場所で家族と食事をしている親戚の姿があった。
「先月、家族で出かけたんだって」
旅行に行ったからといって、お金に余裕があるとは限らない。
それでも、返済の話を三度先延ばしにされた直後だっただけに、私は少し複雑な気持ちになった。
何度か声をかけようと思ったが、法事の席には親戚が大勢いて、次々に誰かが話しかけてくる。結局、会食の間に二人だけで話す時間は作れなかった。
帰り際、駐車場でようやく相手と二人になった。
私が返済のことを切り出そうとすると、相手のほうが先に口を開いた。
「なんか、細かいこと言われてるみたいで気まずくてさ」
「責めたいわけじゃないよ。いつごろ返せそうか知りたいだけ」
すると相手は少し顔をしかめた。
「親戚なんだから、そこまで言わなくてもいいだろ」
その表情を見た瞬間、私はそれ以上言葉を続けられなかった。
相手は「じゃあ」と短く言って車に乗り込み、そのまま駐車場を出ていった。
30万円は、今も返ってきていない。
何度も催促することにも疲れ、いつからかカレンダーに印をつけるのもやめた。
今年の盆にも顔を合わせた。麦茶を飲みながら近所の話をしていた相手は、帰り際になって小さな声でこう言った。
「そのうち落ち着いたら、ちゃんとするから」
私は「うん」とだけ返した。
親戚だからこそ、お金の話をどこまで強く言っていいのか分からない。その迷いだけが、何年たっても残っている。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














