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2026.09.16(Wed)

「えっ。こんなところで会うなんて」偶然再会して話し込んだ2人。止まった朝食の列を動かした、係の人のひと言

「えっ。こんなところで会うなんて」偶然再会して話し込んだ2人。止まった朝食の列を動かした、係の人のひと言

うしろから、同じ言葉が2度聞こえた

夫と出かけた旅の三日目。朝食会場に下りたのは、開いて間もない時間だった。

その日は朝からよく歩く予定だったので、しっかり食べておこうと思い、私はまずご飯と味噌汁の台へ向かった。

炊飯器の前では、一人の女性が茶碗にご飯をよそっていた。そのとき、横から来た別の女性が「あれ?」という顔で立ち止まった。

「あら、もしかして…」

ご飯をよそっていた女性も顔を上げた。

「えっ。こんなところで会うなんて」

どうやら知り合い同士らしい。思いがけない再会がうれしかったのか、2人ともその場で笑い始めた。

「いつから来てたの?」

「昨日から。そっちは?」

「うちも昨日。全然気づかなかった」

楽しそうなのは分かる。ただ、最初にいた女性の手には、まだしゃもじが握られていた。

話しながら少し横へ寄る様子もなく、炊飯器の前は2人でふさがったままだった。

私は少し待ってみたものの、話は終わりそうにない。邪魔にならないよう一歩下がると、後ろからトレーを持った人が近づいてきた。

私が台から離れて見えたのだろう。その人は遠慮がちに声をかけてきた。

「あ、お先にどうぞ」

「いえ、私も待ってるところなんです」

「ああ、そうなんですね」

その人も前の様子に気づき、私の斜め後ろで足を止めた。

しばらくすると、さらに別の人が来た。

「どうぞ、先に」

「ありがとうございます。でも、前がまだ空いてなくて…」

その人は炊飯器のほうを見て、「ああ…」と小さく声を漏らした。

気づけば後ろには三人ほどが並んでいた。

誰も2人に声をかけることはなく、近くで食器が触れ合う音だけが妙に大きく聞こえた。

私はいったんご飯をあきらめ、パンの台へ移ることにした。

けれど、パンの台もすでに混み始めていた。かごに残っていたパンはすぐになくなり、パン焼き機の前にはトングを持った人たちが並んでいる。

焼き上がりを待ちながら、私は何度か炊飯器のほうを振り返った。

しゃもじが台に戻されるまで

少しして、飲み物の台を整えていた係の人が手を止めた。

炊飯器の前に人がたまっていることに気づいたらしく、2人のところまで歩いていった。

「恐れ入ります。こちら、いったんお預かりしますね」

声をかけられた女性は、一瞬きょとんとしてから自分の手元を見た。

「あっ、ごめんなさい。私、ずっと持ったままでした?」

「お話の続きは、よろしければお席でどうぞ」

「すみません、つい話し込んじゃって」

もう一人の女性も周りを見て、待っている人たちに気づいたようだった。

「ごめんなさい。気づかなくて」

係の人は受け取ったしゃもじを炊飯器の横へ戻した。

それを合図にしたように、止まっていた列が静かに動き始めた。

2人はまだ話しながらも、今度は少し声を落として席のほうへ歩いていった。

私もパンの列から離れ、ご飯の台へ戻った。

順番が来て茶碗に必要な分だけよそうと、後ろにも人がいるのを確認して、すぐにしゃもじを元の場所へ戻した。

味噌汁も取って席へ戻ると、先に食べ始めていた夫が私の茶碗を見た。

「あ、ご飯取れたんだ」

「うん。やっとね」

「そんなに混んでた?」

私は椀を置きながら答えた。

「混んでたっていうか…」

夫が箸を止めた。

「何かあった?」

「前で知り合い同士が会ったみたいで、そのまま話し込んじゃって。みんな空くのを待ってたの」

「ああ、それで進まなかったのか」

「そう。最後は係の人が声をかけてくれた」

窓際を見ると、あの2人はもう席に着き、楽しそうに話を続けていた。

ご飯の台では、しゃもじが一人ずつの手に渡り、そのたびに元の場所へ戻されていた。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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