「水曜日、後ろの席にいたの」スクールで出会っただけの知人。だが、薄気味悪い発言に距離をとった瞬間
ひとりだけの時間
私には、ささやかな楽しみがありました。
毎週水曜の午後、駅前のカフェで一人、コーヒーを飲みながら本を読む。
それだけの、けれど私にとっては何より大切な時間だったのです。
いつも決まって午後2時に店へ入り、奥まった同じ席に腰を下ろします。
窓の外をぼんやり眺めながら、誰にも邪魔されずに過ごせる、静かなひとときでした。
その習慣のことを、誰かに話した記憶はありません。
家族にすら、わざわざ言うようなことでもなかったのです。
スクールでの一言
通っていたカルチャースクールに、顔見知り程度の女性がいました。
年は私より少し上で、教室で会えば挨拶を交わす、その程度の関わりです。連絡先も、下の名前すらも知りませんでした。
ある日、その人が私の隣に来て、にこにこと話しかけてきました。
世間話の流れかと思って聞いていると、女性はふいにこう言ったのです。
「水曜日、後ろの席にいたの」
意味が分からず、私は返す言葉に詰まりました。
私があのカフェにいることを、どうしてこの人が知っているのでしょう。
その日の予定を、教室で口にした覚えなど、まるでないのです。
薄気味悪い理由
戸惑う私に、女性は悪びれもせず続けました。
私がいつも座る席の、すぐ後ろに、彼女もまた腰かけていたというのです。
同じ教室で挨拶していただけの相手が、私の午後をそこまで見ていたと知って、言葉を失いました。
「あなたの読んでる本、気になってたのよ」と、女性は楽しげに笑いました。
親しみのつもりなのかもしれません。けれど私には、その笑顔がどうにも薄気味悪く感じられてなりませんでした。
考えてみれば、私はその人に、行きつけの店の名前すら教えていません。
それなのに、座る席の位置まで言い当てられてしまいました。ひとりきりのはずだった時間が、ずっと誰かの視界の中にあったのだと気づいて、体が固まったのです。
翌週から、私はそのカフェへ通うのをやめました。
スクールの曜日もそっと変えて、その人と顔を合わせずにすむようにしたのです。
声を荒らげることも、問い詰めることもしませんでした。ただ、水曜の午後がやってくるたびに、うなじのあたりに、かすかな視線の名残を感じてしまうのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














