「家のお金、足りなくなるじゃない」給料の大半を家に入れていた私。だが、自分名義の口座を作った私が決めたこと
給料が入っても、ほとんど残らなかった
若いころ、私は両親と妹と実家で暮らしていました。
就職したばかりのころ、母から「家も余裕がないから、少し助けてもらえる?」と言われ、毎月生活費を入れるようになりました。
最初は決まった額だけでした。けれど、少しずつ渡す金額が増えていきました。
「今月、もう少し出せない?ちょっと足りなくて」
「え、また?」
「ごめんね。妹にもまだお金がかかるし、今月だけお願い」
母にそう言われると、断れませんでした。
給料はもともと私名義の口座に振り込まれていました。ただ、給料日になると私はそこから大半を下ろし、封筒に入れて母へ渡していたのです。
「ありがとう。ほんと助かる」
その言葉を聞くたびに、「家族なんだから仕方ない」と思っていました。
ところがあるとき体調を崩して仕事を休み、自分の残高を見て不安になりました。
何年も働いているのに、もし急に仕事を続けられなくなったら、自分のために使えるお金がほとんどありません。
それでも家計は苦しいままで、両親がお金の相談をしている声も何度か聞きました。
私が渡し続ければ何とかなると思っていたけれど、このままではずっと終わらない。
そう考え、私は自分のために残すお金を分ける別の口座を作ることにしました。
「もう今までみたいには渡せない」
口座を作った日の夕方、家に帰ると、母は台所で夕食を作っていました。父は座卓で新聞を読んでいます。
何度も頭の中で考えてきたのに、いざ顔を見るとなかなか言葉が出ませんでした。
「お母さん、ちょっと話していい?」
「なに?どうしたの、そんな顔して」
私は少し間を置いてから言いました。
「来月から、給料を今までみたいには渡せない」
母が鍋から手を離しました。
「え?どういうこと?」
「生活費はちゃんと入れるよ。でも、それ以上は自分で残したい」
母は困ったように眉を寄せました。
「でも急に減ったら、家のお金、足りなくなるじゃない」
その言葉を聞いた瞬間、胸が痛みました。
また私が出せば済む。今まで何度もそうしてきたからです。
けれど、今回は首を振りました。
「ごめん。でも、もう渡しません」
父も新聞を置きました。
「家にいる以上、生活費は必要だぞ」
「それは分かってる。だから決めた額は入れる。でも、残った分まで全部渡すのはやめたいの」
母はしばらく黙ったあと、小さく息をつきました。
「…急だったから、びっくりした」
「うん。でも私も、少しは自分のお金を残したい」
母はすぐには納得した顔をしませんでしたが、最後には「分かった」とだけ答えました。
翌月の給料日、私は決めた生活費だけを母へ渡し、残ったお金の一部を新しく作った口座へ移しました。
通帳に残った数字は、決して大きなものではありません。
それでも、自分で働いたお金を自分のためにも残していいのだと、ようやく思えました。
家族を支えることと、自分の生活を守ること。その二つを分けて考えられるようになったのは、あの日が初めてでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














