「親戚なんですけど、それでもダメですか?」朝食会場で後から合流したグループ。だが、係員に止められた結果
列の前のほうに、5人が入っていった
旅先の宿で迎えた朝のことです。朝食会場は決まった時間に開くと聞いていたので、私は少し早めに下の階へ降りました。
入口にはすでに十人ほどが並んでいました。先頭には家族連れがいて、その後ろにも何組か続いています。私も最後尾につき、扉が開くのを待っていました。
やがて朝食会場が開き、列がゆっくり動き始めました。
そのとき、後ろでエレベーターの到着音がしました。降りてきたのは5人ほどの家族です。
ところが、その人たちは最後尾には並ばず、私たちの横を通り過ぎていきました。
「あ、いたいた」
前のほうにいた家族が振り返り、「こっち、こっち」と手を上げます。どうやら親戚同士だったようです。
5人はそのまま前方の家族のところへ入りました。
私の前にいた年配の女性が驚いたように振り返り、小さな声で言いました。
「え…今の人たち、ここに入るんですか?」
近くにいた5人のうち一人が、少し困ったように笑いました。
「すみません。連れなんです。先に並んでもらってたので」
女性は戸惑いながらも、「でも、みんな並んで待ってたから…」と言いかけました。
すると相手は悪びれるというより、本当に問題ないと思っている様子で答えました。
「一緒のグループなんで、合流するだけなんです」
女性はそれ以上何も言わず、私もどうしたものかと黙っていました。
「お連れさまでも、最後尾からお願いします」
ちょうどそのやり取りに気づいたのか、入口にいた係の人がこちらへ歩いてきました。
そして5人に、穏やかな声で話しかけました。
「恐れ入ります。後から来られた方は、最後尾からお願いしています」
5人の一人が少し驚いた顔をしました。
「え、でも前にいるの、うちの親戚なんですけど」
係の人は表情を変えずに答えます。
「はい。お連れさまなのは分かるのですが、皆さま順番にお待ちいただいていますので……申し訳ありません」
すると別の人が、少し納得できないような顔で前の家族を見ました。
「一緒に食べるだけなんですけど、それでもダメですか?」
係の人は最後尾の方向へ手を向けました。
「申し訳ありません。お連れさまでも、後から来られた方は最後尾からお願いします」
それでも5人がその場に立ったままだったため、係の人はもう一度、今度は少しだけ丁寧に頭を下げました。
「お待たせしてしまっている方もいらっしゃいますので、こちらからお願いいたします」
しばらく沈黙したあと、一人が小さく息を吐きました。
「……しょうがないね。後ろ行こうか」
「先に並んでもらってたから大丈夫だと思ってた」
「まあ、そういう決まりなら仕方ないね」
5人は前にいた親戚に「先に入ってて」と声をかけ、列の最後尾へ歩いていきました。
先ほどの年配の女性は、その背中を見送ってから、ほっとしたように小さく息をつきました。
その後は、先に並んでいた人から順番に会場へ入っていきました。
私も中へ入ると、少し前を歩いていた女性と目が合いました。女性は苦笑いするようにこちらを見て、ほんの少しだけ会釈をしました。
親戚と合流するだけだから大丈夫。5人に悪気はなかったのかもしれません。
ただ、その場には同じように朝早くから並んで待っている人がいました。係の人が感情的に責めず、最後まで同じルールを伝え続けたことで、大きな言い争いにならずに済んだ朝でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














