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2026.09.17(Thu)

「パリッとしてるのが売りだろ」前日のたい焼き3つを食べ終えて苦情に来た男性。店長が伝えたしんなりする理由

「パリッとしてるのが売りだろ」前日のたい焼き3つを食べ終えて苦情に来た男性。店長が伝えたしんなりする理由

3つとも食べたという苦情

高校生のころ、たい焼き屋でアルバイトをしていた。薄皮のパリッとした食感が売りで、開店前の鉄板からは甘い匂いが通路まで流れていた。

ある朝、開店して間もないころ、60代くらいの男性がカウンターへやってきた。少し険しい表情で、昨日ここで買ったたい焼きが、家で食べたらしんなりしていたと言う。

「昨日ここで買ったんだけどさ。全然パリッとしてなかったぞ。パリッとしてるのが売りだろ?」

突然の強い口調に驚きながら、私は頭を下げた。

「申し訳ありません。お持ち帰りいただいたものですよね」

すると男性は、いら立ったようにもう一度言った。

「そうだよ。でも、パリッとしてるのが売りだろうが」

2度目は、通路を歩いていた人が振り向くほどの声だった。

私はどう返せばいいのか分からず、隣にいた先輩を見た。先輩も少し困った顔をしながら、男性に尋ねた。

「昨日はいくつお買い上げになりましたか?まだ残っているものはありますか?」

「3つ買ったよ。もう全部食べたけど」

思わず言葉に詰まった。

先輩も一瞬黙ったあと、「全部召し上がったんですね」と確認した。

その時間はまだ店長が出勤していなかったため、先輩が男性に頭を下げた。

「責任者がもうすぐ来ますので、申し訳ありませんが、少しお待ちいただけますか」

「俺は別に無茶を言ってるんじゃないよ。ちゃんとしたのを売ってほしいだけなんだ」

男性は納得できない様子だったが、そのままカウンターの前で待っていた。

店長が指さした店頭の張り紙

店長を待つあいだも、男性は「昨日は楽しみにして持って帰ったんだ」「あれじゃ話が違うだろ」と、不満を口にしていた。

先輩と2人でそのたびに頭を下げているうちに、私の膝は少し震えていた。

通りかかった買い物客がちらりとこちらを見て、そのまま足早に通り過ぎていく。

開店したばかりの静かな通路に男性の声が響き、私はどう対応すれば正解なのか分からなくなっていた。

しばらくして店長が出勤すると、すぐにカウンターへ来た。

「お待たせして申し訳ありません。どうされましたか?」

男性は店長にも、昨日買ったたい焼きがしんなりしていたことを最初から説明した。

店長は途中で遮らずに話を聞き終えると、店頭に貼ってある案内を指さした。

「楽しみにしてくださっていたのに、申し訳ありません。ただ、パリッとした食感を楽しんでいただけるのは、基本的に焼きたてのうちなんです」

男性は張り紙をちらりと見た。

「そんなの、いちいち読んでないよ」

「そうですよね。ただ、お持ち帰りで時間がたつと、どうしても皮がしんなりしてしまうんです」

「でも、パリッとしてるって書いてあるだろ」

男性が食い下がっても、店長の声の調子は変わらなかった。

「はい。焼きたてはパリッとしています。ただ、時間がたったものまで同じ食感を保つのは難しいんです」

男性はもう一度、張り紙に目を向けた。

「…じゃあ、持って帰ったら変わるってこと?」

「時間がたてば、どうしても変わってしまいます。できれば焼きたてのうちに召し上がっていただくのが一番なんです」

店長は責めるような言い方をせず、男性が納得できるまで同じ内容を言葉を変えながら説明していた。

しばらく黙っていた男性は、「まあ、そういうことなら…」と小さくつぶやいた。

すると店長が言った。

「今回は焼きたてをご用意します。よかったら、今の食感を確かめてみてください」

店長の判断で新しくたい焼きを用意することになり、私たちは焼き始めた。

しばらくして焼き上がったものを紙袋に入れると、男性はそれを受け取った。

「次からは、なるべく早く食べるよ」

そう言って、帰り際にもう一度だけ店頭の張り紙を見てから歩いていった。

男性の姿が見えなくなると、店長は私たちのほうを振り返った。

「びっくりしたよね。二人とも、ちゃんと待ってもらってくれてありがとう」

私は張りつめていた息を吐いた。

「どうしたらいいのか分からなくて…」

「それでいいよ。こういうときは、その場で無理に決めなくていいから。責任者に確認しますって言えば大丈夫」

先輩も「よかった…」と小さく息を吐いた。

私もようやく肩の力が抜け、そのあと並んだ親子連れには、少し声を上ずらせながらも、いつものように「いらっしゃいませ」と言うことができた。

その夜、家で母に今日あったことを話した。

「朝から大変なお客さんが来てさ。昨日のたい焼きがしんなりしてたって、ずっと怒ってたの」

「それは怖かったね。どうなったの?」

「店長が説明したら、最後は分かってくれた。私だったら、あんなに落ち着いて話せなかったと思う」

母に話しているうちに、朝から残っていた緊張がようやくほどけていった。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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