「大安だったから。たまたま当たったね」結婚式を言い当てた別部署の男性。今も見られている社内予定表
親族だけの式と1日の休み
結婚式は、親族だけで小さく挙げると夫と決めていた。会社には金曜に有給を取ることだけを伝え、理由は誰にも話していなかった。
わざわざ職場で言うほどのことでもないと思っていた。
式の前の週、昼休みにエレベーターを待っていると、別の部署の男性が隣に並んだ。五十代くらいで、フロアも違い、名前を知っている程度の人だった。
男性は私を見ると、何気ない調子で声をかけてきた。
「今週、金曜休みなんだね」
「あ、はい。ちょっと用事があって」
すると男性は少し笑って、こんなことを言った。
「その次の日、大安だよね。もしかして結婚式とか?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「え…どうして分かったんですか?」
ちょうどエレベーターの扉が開いた。男性は先に乗り、開くボタンを押しながら答えた。
「社内の予定表で休みを見て、大安だったから。なんとなくそうかなって」
「でも、予定表には休みって出てるだけですよね?」
自分でも、少し声が硬くなったのが分かった。
けれど男性は特に気にした様子もなく、笑ったままだった。
「うん。社内の予定表で休みを見て、大安だったから。たまたま当たったね」
「…そうなんですね」
それ以上、何を返せばいいのか分からなかった。
エレベーターが自分の階に着くまで、私は階数の表示だけを見上げていた。
今も廊下でかけられる声
家に帰ってから、夫にその話をした。
「今日、会社の人に結婚式のこと当てられたんだけど」
「え?誰かに話したんじゃないの?」
「話してないよ。予定表で金曜が休みになってて、次の日が大安だからって」
夫は最初、「すごい勘だね」と笑った。
「でも、予定表には休みって出るだけなんだよ。理由も何も書いてないの」
そう説明すると、夫も少し黙った。
「それだけで結婚式まで当てたの?」
「うん。『社内の予定表で休みを見て、大安だったから』って、同じことを二回言われた」
「……ずいぶん細かく見てるんだね」
「私も、そこがちょっと気になって」
式は親族に囲まれて無事に終わった。
男性がその後、何か困るようなことをしてきたわけではない。私も今まで通り、同じ職場で働いている。
ただ、その後も休みを入れたあとに廊下ですれ違うと、男性から声をかけられることが何度かあった。
「今度、休み取ってるんだね。どこか行くの?」
「いえ、ちょっと用事で」
「ああ、そうなんだ」
悪気のある言い方ではない。だから私も、そのたびに笑って答えていた。
それでも、予定表に休みを入れて保存を押す瞬間だけは、少し手が止まるようになった。
今朝も、来月の金曜に休みをひとつ入れた。
昼前、給湯室から出ると、廊下の先にあの男性がいた。私に気づくと、軽く手を上げる。
そして、すれ違いざまに笑って言った。
「来月の金曜、休みなんだね」
「……はい。ちょっと用事で」
いつものように答えながら、私はまた、あの日のエレベーターを思い出していた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














