「ゆうべは玄関の明かりが11時まで点いてたわね」笑顔で話す隣の女性。毎日開いている窓が怖くなった理由
玄関を開けると、いつも目が合う女性
私は家族3人で、貸し家の一戸建てに暮らしています。
同じ形の家が狭い間隔で並んでいて、わが家の玄関のすぐ横には、隣家の窓があります。
その窓際にいつもいるのが、60代くらいの女性です。
窓のふちにひじをついて外を眺めていて、私が玄関を開けると、決まって目が合います。
「あら、こんばんは。今お帰り?」
「はい、今帰ったところです」
「お疲れさま。ゆっくり休んでね」
女性はいつもにこやかで、感じのいい方でした。
不思議なのは、その窓がほとんどいつも開いていることです。
晴れた朝も、日が落ちてからも、大雨の日でさえ開いています。
最初は、よほど風通しを大切にしているのだろうと思っていました。
ところが、挨拶を交わすうちに、女性の話す内容が少しずつ変わっていきました。
私が朝、何時ごろ家を出たか。子どもが体操服で登校したことまで、何気ない世間話に出てくるのです。
どれも間違ってはいません。窓から見ていれば分かることばかりでした。
「お隣さん、いつも窓のところにいるね」
家族にそう言われても、私は笑って答えていました。
「見守ってくれてるのよ、きっと」
このときは、まだそう思っていたのです。
「11時まで点いてたわね」と言われて
ある日、仕事で帰りが遅くなった夜のことです。
帰宅すると家族はすでに寝ていました。私も疲れていて、玄関の明かりを消し忘れたまま布団に入ってしまいました。
その後、ふと目が覚めて、明かりを消していないことに気づきました。
起きて消しに行くと、時計は午後11時を指していました。
翌朝、いつものように玄関を開けると、隣の女性が窓際から会釈をしてきました。
「おはようございます」
「おはよう。昨日は帰りが遅かったのね」
「ええ、仕事が長引いてしまって」
すると女性は、いつもの世間話と同じ調子で続けました。
「ゆうべは玄関の明かりが11時まで点いてたわね」
「あ……すみません。消し忘れてしまって」
思わず謝ると、女性は笑顔のまま答えました。
「いいのよ。明るくてよかったわ」
怒っている様子はまったくありません。それどころか、いつもと変わらない穏やかな口調でした。
私は軽く頭を下げ、そのまま歩き出しました。
けれど、角を曲がるころになって、急に気になり始めたのです。
私が明かりを消したのは、夜の11時。
女性は、その時間まで明かりが点いていたことを知っていました。
あの時間にも、こちらの様子を見ていたのでしょうか。
これまでは、よく気のつく親切な方だと思っていました。けれど、帰宅時間だけでなく、夜の明かりまで知られていたことに、なんとも言えない落ち着かなさを覚えました。
今日も開いていた隣の窓
とはいえ、女性から何かをされたわけではありません。
挨拶もいつも丁寧ですし、嫌なことを言われたこともありません。
大家さんに相談するような出来事なのかも分からず、結局、窓に面した部屋のカーテンを厚いものに替えるだけにしました。
もちろん、カーテンを替えたところで、玄関を出入りする姿までは隠せません。
それ以来、寝る前に玄関の明かりを確認するのが習慣になりました。
そして今朝のことです。
外は大雨でした。傘立てには2本の傘があり、私は青いほうを手に取りました。
玄関のドアをそっと開けると、隣の窓は今日も開いていました。
雨が吹き込む窓際には、いつものようにひじをついた女性がいます。
目が合うと、女性はにっこり笑いました。
「今日は、青いほうの傘なのね」
ただの挨拶のつもりなのかもしれません。
それでも私は、何と返せばいいのか分からなくなってしまいました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














