「うちの子に何かしたわけじゃないですよね?」転んだ男の子を助けた私。母親の疑いを晴らした、子供のひと言
足もとに飛び出してくる、小さな背中
天気のいい昼下がり、私は公園を散歩していました。
芝生の広場では、小さな子どもたちが楽しそうに追いかけっこをしています。
ただ、夢中になって走る子どもたちが、何度も私のすぐ前を横切っていきます。
そのたびに立ち止まったり、体をよけたりしながら歩いていました。
広場の端にあるベンチでは、母親たちがおしゃべりをしていました。
ときどき大きな笑い声が聞こえてきますが、子どもたちが近くを走り抜けても、特に気にする様子はありません。
子どもが元気に遊ぶのはいいことです。
でも、誰か一人くらい見ていてくれたら安心なのに。
そんなことを考えながら広場を抜けようとした、そのときでした。
目の前を走っていた3歳くらいの男の子が、足をつまずかせて転んでしまったのです。
男の子は大きな声で泣き始めました。私は慌ててしゃがみ込み、両脇を支えて起こしました。
「大丈夫?痛かったね」
そう声をかけると、男の子は泣きながら、すりむいた手のひらを見せてくれました。
「あらら、すりむいちゃったね」
どうしようかと思っていたところへ、ベンチにいた女性が慌てて駆け寄ってきました。男の子の母親でした。
母親のひと言に戸惑っていると……
母親は男の子を自分のほうへ引き寄せると、私を見て言いました。
「えっ、何があったんですか?」
「そこで転んじゃったみたいで。泣いていたので起こしたんです」
すると母親は、少し警戒したような表情になりました。
「あの、うちの子に何かしたわけじゃないですよね?」
思いがけない言葉に、私は驚きました。
「いえ、何もしていませんよ。転んだところを見たので……」
「そうですか。でも、知らない人に急に触られると、ちょっと…」
母親は困ったような顔をしています。
心配になる気持ちは分かります。
でも、目の前で転んだ子どもを放っておくわけにもいきません。
どう返事をしようか迷っていると、男の子が母親の服を引っぱりました。
「ママ、このお姉さんが起こしてくれたんだよ」
「え?」
母親が男の子の顔を見ると、男の子は私を指さして続けました。
「ママ、ずっとお話ししてたでしょ」
その言葉に、母親は一瞬黙ってしまいました。
近くのベンチで話していた母親たちも、こちらに気づいておしゃべりをやめました。
通りかかった人たちも、何事かというように視線を向けています。
母親は気まずそうに男の子と私を交互に見ると、小さく頭を下げました。
「……すみません。転んだところ、見ていなくて」
「いえ。大きなけがじゃなさそうで、よかったです」
そう答えると、母親はもう一度頭を下げました。
男の子もすっかり泣きやみ、私に手を振ってくれました。
「お姉さん、ありがとう!」
「どういたしまして。気をつけてね」
私も笑って手を振り返しました。
ふとベンチのほうを見ると、それまでおしゃべりをしていた母親たちが立ち上がり、それぞれの子どものそばへ向かっていくところでした。
転んだ子を助けただけなのに、思いがけず責められてしまった私。それでも、男の子がちゃんと見ていてくれたことが、何よりうれしく感じられた出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














