「今月のご褒美」とSNSに旅先の景色や高そうな服の写真を載せる弟。後日、写真を弟が消したワケ
画面に並ぶ「今月のご褒美」
夜、自分の部屋で携帯電話を開くと、また弟のSNSに新しい写真が載っていました。
旅先の景色や高そうな服の写真です。添えられていたのは、いつもの「今月のご褒美」という言葉でした。
弟に10万円を貸したのは、2年前のことです。
「転職したばかりで生活費が足りなくてさ。来月の給料が入ったらすぐ返すから」
そう頼まれ、困っているなら助けてあげたいと思い、私は迷わず振り込みました。
ところが、翌月になっても返済はありません。電話で確認すると、弟はこう言いました。
「今月も出費が重なってさ。もうちょっと待ってよ」
それからも返済の話は弟の口から出ず、お金は戻ってきませんでした。
一方、弟のSNSには、旅行や買い物を楽しむ写真が毎月のように投稿されていました。
もちろん、写真だけでは弟の懐事情は分かりません。それでも、返済について何の連絡もないまま楽しそうな投稿が続くことに、私は複雑な気持ちになっていました。
先月、実家に帰省したときのことです。両親が居間でテレビを見ているあいだに、私は台所にいた弟に声をかけました。
「あの10万円、そろそろ返してもらえる?」
弟は冷蔵庫を開けたまま振り向き、面倒くさそうな顔をしました。
「今は無理だって。お金ないし」
「でも、来月すぐ返すって約束だったよね。もう2年たってるよ」
「身内なんだから、そこまで言わなくてもいいだろ」
「身内でも、借りたお金は返してほしいよ」
すると弟は、居間のほうをちらりと見ました。
「だから、親の前でそういう話するなよ。心配するだろ」
確かに、私も両親には余計な心配をかけたくありませんでした。納得はできませんでしたが、それ以上は話を続けられませんでした。
食卓で止まった笑い声
その後の週末、実家で家族そろって食卓を囲んだときのことです。
弟は母の隣で携帯電話を取り出し、旅行の写真を見せ始めました。
「今月のご褒美でさ。ほら、ここの景色」
「まあ、きれい。でも、お金は大丈夫なの?」
母がそう尋ねると、弟は笑って答えました。
「大丈夫だよ。そんなに心配しなくても」
その返事を聞いて、私は先月の台所でのやり取りを思い出しました。
私にはお金がないと言いながら、両親には心配ないと話す弟。何より、返済の相談さえしてもらえないことが悲しくなりました。
私は向かいの席から、弟に声をかけました。
「ご褒美の前に、10万円返せるよね」
弟の笑顔が消え、携帯電話を持つ手が止まりました。
「え、何の話?」
驚いた母に、私は事情を話しました。
「2年前に10万円貸したんだよ。来月返すって約束だったのに、まだ返してもらってないの」
そして、弟に向き直りました。
「この前も今は無理って言ってたよね。旅行に行くなとは言わないけど、いつ返せるのかくらい、ちゃんと話してほしい」
弟は何か言いかけましたが、結局何も言わず、携帯電話を膝の上に下ろしました。
それまで黙って聞いていた父が、箸を置きました。
「お前、まだ返してなかったのか」
弟はうつむいたまま、何も答えませんでした。母も驚いた様子で弟を見ています。
その夜、父は弟と遅くまで話をしていました。
そして翌月から、弟は少しずつ私にお金を返してくるようになったのです。
後日SNSを確認すると、「今月のご褒美」と書かれた写真は消えていました。実家の食卓でも、弟が携帯電話を取り出すことはなくなりました。
ふと目が合ったとき、弟は何も言わずに視線を落としました。
2年間ずっと曖昧になっていた返済の約束が、ようやく動き始めたことに、私はほっとしました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














