「道に置くしかないでしょう」客が来るたびに始まる路上駐車。だが、注意したのは意外な人物だった
道をふさぐ、来客のたびの路上駐車
閑静な住宅街に越してきた一家は、とにかく人の出入りが多かった。
友人や親戚を呼んでは楽しそうに過ごしていて、家の前にはいつも見慣れない車が並ぶ。
にぎやかなのはいいけれど、その車の停め方が、近所を静かに追いつめていた。
一家の駐車場は1台分だけで、そこは自分たちの車でふさがっている。
来客の車は毎回、細い生活道路にはみ出す形で停められた。
とりわけ困っていたのが、真隣の家の人だ。自分の車を出そうにも、目の前をふさがれてぶつけそうになり、毎日ひやひやしながらハンドルを握っていた。
休日には来客の車が何台も路肩に連なり、道の片側がまるまる埋まってしまうこともあった。
歩いて通る子どもや高齢者にとっても、決して安全とは言えない状態だった。
怖いと評判の住人が、沈黙を破った
やんわり伝えても、一家の返事はいつも同じだった。
困り顔のこちらに、ためらいもなくこう言い放つのだ。
「道に置くしかないでしょう」
悪気があるというより、それが当然だと信じきっている口ぶりで、話はいつも平行線のままだった。
こちらが折れるのを待っているようでもあった。
誰も強くは言えず、路上駐車は日ごとに堂々としていった。
流れが変わったのは、ある休日のことだ。
隣の人の車がまた停車中の車と接触しかけたその瞬間、近所で「関わらないほうがいい」と噂されるほど怖い住人が、突然大声を上げた。
「人の家の前を、毎日ふさぐな」
少し離れた家まで響く怒声だった。
ふだんめったに口を開かない人の剣幕に、その場が凍りつく。
「出られなくて困ってる人がいるだろう。客が来るなら停める場所くらい自分で用意しろ」
正論を真正面からぶつけられ、あれほど強気だった一家は、一言も返せずうなだれていた。まわりで見ていた住人たちも、胸のすく思いと、これまで黙っていた後ろめたさを同時に噛みしめていた。
翌日から、家の前の路上駐車はすっかり姿を消した。来客時は近くの駐車場を使うようになったようで、隣の人も肩の力が抜けたと笑った。
「ずっと言えなかったことを、あの人が代わりに言ってくれた」と、その目には涙がにじんでいた。
怖いと避けられていた人が、誰も踏み込めなかった問題をたった一声で片づけてしまう。避けていた相手こそ、近所を誰より見ていた人だったのだと、皆が少しばつの悪い思いで気づかされたのだった。
それからというもの、その人に会うと自然と挨拶を交わすようになった。怖いという評判は、いつのまにか頼もしいという言葉に変わっていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














