「200万は貸すから、利子はいらない」弟に貸した奨学金分のお金。書面まで用意したワケ
5歳の差が意味を持った年
弟が大学に進むとき、奨学金を2種類借りました。利子のつかないものと、つくものです。
当時の私は就職して間もなく、その中身をよく知りませんでした。
意味が分かったのは、弟の返済が始まる年です。私は5歳上ですから、そのとき働いて5年が過ぎていました。
生活は落ち着き、口座には手をつけずに残っている額があります。
実家で弟の返済予定の紙を見せてもらい、利子のつくほうの総額を目で追いました。
返し終わるまでに、元金にかなりの額が乗る計算です。
「200万は貸すから、利子はいらない」
「いや、それは受け取れないって」
「あげるとは言ってない。私に返して」
書面にしたのは信用のためではない
私たちは、仲の良い姉弟ではありません。
用がなければ連絡もしませんし、話が弾んだ記憶もあまりない。その距離感で200万円を動かすなら、形が必要だと思いました。
作ったのは、法律の決まりに沿った書面です。
貸した額、返す額、間隔、遅れた場合の扱い。調べながら二人で文言を決めて、読み合わせをしてから署名しました。
「ここまでする?」
「するよ。あとで揉めたら、もっと面倒だもん」
弟は素直にうなずいて、名前を書きました。感謝の言葉も、遠慮の言葉もありません。
手続きめいたやりとりのほうが、この距離の私たちには合っていたのだと思います。
押した数だけ、確かになる
返済のたび、二人で判を押します。金額と日付を書いて、朱肉を出して、順番に。それだけの作業です。
「今月ぶん、置いていくね」
「じゃあ、ここに押して」
用件が済めば弟は帰ります。近況を聞くこともありません。それでも、判の跡が並んでいくのを見ると、この人はきちんとやっているのだと分かります。
言葉で確かめなくていいのが、うちには合っていました。仲直りをしたわけでも、急に打ち解けたわけでもない。ただ、約束が守られている記録だけが、毎回ひとつずつ増えていきます。
無利子のほうも、弟は自分で返し続けているようです。200万円はまだ残っていますが、私は半分あげたつもりで気長に待っています。
困っていないので、催促もしません。
姉として、静かに見ているだけです。判を押すあいだの数分が、私たちには十分な会話になっています。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














