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2026.08.30(Sun)

「表紙は明るい色で、雨の場面があって」本を探しに来た客。だが、曖昧な情報しかないのに、店員が誠実に対応した結果

「表紙は明るい色で、雨の場面があって」本を探しに来た客。だが、曖昧な情報しかないのに、店員が誠実に対応した結果

覚えていた題名では、どこを探しても見つからなかった

書店に勤めていた頃の話です。夕方、レジの列が途切れたころ、一人の男性のお客さまがカウンターに来られました。

少し困ったような表情で、こう尋ねられました。

「テレビで紹介されていた本を探しているんです。たしか、こんな感じの題名だったと思うんですが……」

教えていただいた言葉を店舗の検索システムに入れてみましたが、それらしい本は出てきません。言葉を少し変えて探してみても見つからず、お客さまも首をかしげていました。

「すみません、題名を勘違いしているかもしれません」

そこで私は、題名はいったん置いておき、覚えていることを聞いてみることにしました。

「表紙や、紹介されていた内容で何か覚えていることはありますか?」

お客さまはしばらく考えてから、「明るい色の表紙だったと思います」と答えました。

さらに話を聞くと、最近テレビで紹介されていた小説で、雨の中で誰かを待つような場面が取り上げられていたこと、紹介した人が「最後のほうで泣いた」と話していたことを覚えているそうです。

「あと、帯に大きな文字があった気がします」

そこまで聞いて、私は最近よく売れている一冊を思い出しました。新刊や話題作が並ぶ平台へ行き、何冊か表紙を確認します。

その中に、お客さまの話とよく似た一冊がありました。

表紙を見た瞬間、客の表情が変わった

「もしかして、こちらではありませんか?」

私が本を差し出すと、お客さまは表紙を見たまま数秒黙りました。そして帯まで確認すると、急に顔を明るくしました。

「あっ、これです!まさにこれです」

もう一度題名を見てから、お客さまは少し恥ずかしそうに笑いました。

「私、勝手に別の題名で覚えてました。そりゃ見つからないですよね」

私も思わず笑ってしまいました。

「いえ、内容をいろいろ教えていただけたので、思い当たりました」

「いやあ、よく分かりましたね。助かりました」

お客さまは安心したようにもう一度表紙を眺め、その本をレジへ持っていきました。

会計を終えると、「今度から気になった本は、ちゃんと題名をメモしておきます」と笑って帰っていかれました。

その後も何度か来店され、本を探すときに声をかけてくださることがありました。

題名が分からなくても、表紙の色や覚えている場面など、少しずつ話を聞いていけば一冊にたどり着けることがあります。書店員として働いていた中でも、特に印象に残っている出来事です。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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