「少し待っていただけますか!」目の見えにくいお客さん。だが、常連客の行動に心温まった瞬間
レジに三人並んでいた、あの夕方
コンビニで働いていたころの話です。以前から、ご夫婦でよく買い物に来られるお客さまがいました。
数年たつと、ご主人が一人で来られることが増えました。
そのころには目が見えにくくなっていたようで、店に入るとレジまで来て、よく私に声をかけていました。
「すみません。これ、どこにあるか一緒に見てもらえますか」
奥さまに頼まれたものをメモしてきていることもありました。
豆腐や味噌、ねぎなど、日によって探すものは違います。
棚の場所を口頭で伝えるだけでは見つけにくいため、店内が落ち着いているときには、私が売り場まで一緒に行っていました。
ところが、ある日の夕方はそうもいきませんでした。
ご主人が来られたとき、レジには三人ほど並んでいました。私は次々と会計をしていて、すぐに売り場へ出られる状態ではありません。
「少し待っていただけますか!」
そう伝えようとしたとき、列のいちばん前にいた常連の男性が振り返りました。
「先にレジやってください。私が一緒に探してきますよ」
「今日は何を探すんですか」
男性はご主人のそばへ行くと、ごく普通の調子で尋ねました。
「何を探すんですか」
ご主人が「豆腐と、ねぎを頼まれていて」と答えると、二人はそのまま売り場へ向かいました。
「豆腐は絹ですか、木綿ですか」
そんな会話が棚の向こうから聞こえてきます。私はレジを打ちながら、ときどき二人のほうを見ていました。
しばらくすると、必要なものを持った二人が戻ってきました。
「助かりました」
ご主人がそう言うと、男性は「私も買い物の途中でしたから」と笑って、自分の会計を済ませて帰っていきました。
顔なじみの人が、自然に声をかけるようになった
それからも、ご主人は一人で買い物に来られました。
私に余裕がある日は、以前と同じように一緒に商品を探します。ただ、あの日の男性など事情を知っている常連のお客さまが居合わせると、「何か探しますか」と声をかけてくれることもありました。
何度か顔を合わせるうちに、ご主人と常連のお客さまたちも少しずつ顔なじみになっていったようです。
毎回誰かが助けてくれるわけではありません。それでも、私がレジを離れられない日に、たまたま居合わせた人が自然に手を貸してくれる。その光景を見るたび、あの夕方のことを思い出しました。
最初に男性が声をかけてくれたのは、大げさな親切心からではなく、自分にもできることが目の前にあったからなのかもしれません。
忙しい店内で交わされた、ほんの短いやり取りでしたが、今でも心に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














