tend Editorial Team

2026.09.15(Tue)

「管理会社に言ったの、そっちだろ」匿名で相談した騒音。しかし、上階の住人が訪ねてきた夜

「管理会社に言ったの、そっちだろ」匿名で相談した騒音。しかし、上階の住人が訪ねてきた夜

毎晩、同じ時間に始まる音だった

二年ほど前のことです。マンションの上の階に、新しい住人が引っ越してきました。

最初の数日は物を運ぶような音がしていましたが、引っ越したばかりなら仕方がないと思っていました。

ところが、次の週から音の感じが変わりました。

夜11時を過ぎるころになると、天井からドン、ドンと、かかとで床を踏むような音が響くようになったのです。

しばらくすると、何か重い物を落としたような音まで混ざります。

隣で横になっていた妻が、天井を見上げました。

「…まただね」

「今日も11時か」

「明日も早いのにね」

「まあ、そのうち落ち着くんじゃないかな」

そう答えたものの、自分でもだんだんそう思えなくなっていました。

連日続くうちに、音が鳴る前から気になって眠れなくなりました。

10時50分を過ぎると、「そろそろ始まるかもしれない」と天井を意識してしまいます。

朝は頭が重く、仕事中にも同じ書類を何度も読み返すようになりました。

十日ほどたったところで、管理会社へ電話しました。

「すみません。夜遅い時間の音について相談したいんですが……」

時間帯や音の様子を話すと、担当の方はこう答えました。

「分かりました。特定のお部屋を名指しせず、生活音について掲示と各戸へのご案内を出します」

私は少し迷ってから確認しました。

「うちから相談したって分からないようにしてもらえますか?」

「はい。部屋番号やお名前は出しません」

「それなら、お願いします」

階段を降りてきた足音が、玄関前で止まった

その日のうちに、集合ポストの近くへ注意書きが貼られ、各部屋にも同じ内容の紙が入れられました。

その夜は、珍しく静かでした。

妻が時計を見ながら言いました。

「今日は大丈夫そうかな」

「このまま静かになってくれたらいいけど」

ところが11時を少し回ったころ、廊下側から足音が聞こえてきました。

階段を降りる音が近づき、うちの玄関前で止まります。

インターホンが鳴りました。

私と妻は顔を見合わせました。

出るか迷っていると、今度はドアを何度か叩く音がしました。

「すみません。ちょっといいですか」

男性の声でした。

私は玄関まで行きましたが、ドアは開けませんでした。

すると、外から少し苛立った声が聞こえました。

「管理会社に言ったの、そっちだろ」

思わず息を止めました。

何も答えずにいると、もう一度ドアが鳴りました。

「聞こえてるよね? そっちが言ったんだろ?」

妻が私のそばまで来て、声を落としました。

「開けないほうがいいよ」

私も小さくうなずきました。

すると外の男性は、さらに語気を強めました。

「こっちは普通に暮らしてるだけなんだけど。管理会社に言ったの、そっちじゃないの?」

同じことを聞かれたのは、それで三度目でした。

心臓が速くなり、手のひらに汗がにじみました。ドア一枚隔てた向こうに相手がいると思うと、返事をする気にもなれませんでした。

しばらくすると、男性は何かつぶやきながら階段を上っていきました。

その直後、天井から一度、ドンと大きな音が響きました。

妻が不安そうに私を見ました。

「……やっぱり、上の人なのかな」

「たぶん。でも、なんでうちだと思ったんだろう」

その夜は、静かになってからもなかなか眠れませんでした。

翌朝、私は管理会社へもう一度電話しました。

「昨日の夜、上の階の人だと思うんですが、うちまで来たんです」

「お部屋まで来られたんですか?」

「はい。『管理会社に言ったのはそっちだろ』って何度も聞かれて……」

担当の方は少し驚いた様子でした。

「こちらからは、お部屋番号もお名前も一切伝えていません」

「そうですよね……」

私たちは直接相手の部屋へ行かず、管理会社を通しただけです。それでも相手は、苦情を入れたのは私たちだと考えたようでした。

それ以来、階段で顔を合わせるのが怖くなりました。出勤するときも、上から人が降りてくる気配がすると、少し待ってから部屋を出ることがあります。

二年たった今も、夜11時ごろになると天井から音が聞こえる日があります。

以前より音が小さい日でも、聞こえた瞬間にあの夜のドアを叩く音を思い出します。胸が速く打ち、指先が冷たくなることもあります。

何度か引っ越しを考えながら先延ばしにしてきましたが、妻とは「次の更新では、今度こそ別の部屋を探そう」と話しています。

真下の部屋なら私たちだと思ったのか、それとも何か別の理由があったのか。あの夜、どうして迷わずうちの玄関まで来たのかは、今も分かりません。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.09.16(Wed)

「今日はもう無理。お願いだから帰って!」深夜1時に隣室から聞こえた声。翌朝、「大丈夫でしたか」が言えなかった理由
tend Editorial Team

NEW 2026.09.16(Wed)

「昨日、買い物してたでしょ」休日の予定を何度も聞いてきた同僚。気まずさを覚悟して私が伝えたひと言
tend Editorial Team

NEW 2026.09.16(Wed)

「痛かったね。立てそう?」転んだ子に手を差し出した私。気づかなかった親が、帰り道で変えたこと
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.07.02(Thu)

「課金期間は自由に使っていいだろ」付き合ってるのにマッチングアプリを使用している彼。我慢出来ずに職場に噂を広めた結果
tend Editorial Team

2026.06.07(Sun)

少子化を巡る議論が白熱!人口減少社会を受け入れるべきか抗うべきか、テクノロジーと社会保障の未来を見据えた選択肢
tend Editorial Team

2026.07.25(Sat)

「まだあげちゃだめ」授乳の間隔まで指示する義母。だが、夫の一言で口出しがぴたりと止まった
tend Editorial Team