「それさ、おでんのつゆに入れてもらえる?」コンビニで客から思わぬお願い。だが、断ると思っていた店長の返事に困惑
コンビニで受けた、初めての注文
学生時代、コンビニでアルバイトをしていたときの話です。
ある冬の寒い朝、作業着姿の50代くらいの男性がレジにやってきました。
男性はホットスナックのケースを眺めながら、私に声をかけました。
「からあげとフランクフルト、あとアメリカンドッグも一つずつお願い」
「はい、少々お待ちください」
私がトングを手に取り、商品を取り出そうとすると、男性が「あ、ちょっといい?」と声をかけてきました。
「それさ、おでんのつゆに入れてもらえる?」
「えっ、おでんのつゆですか?」
「そうそう。そっちの」
男性はレジの横にあるおでんの鍋を指さしました。
「あの、三つともですか?」
「うん、全部」
私は思わず手を止めました。
おでんのつゆにホットスナックを入れるなんて、初めて聞く注文です。
どう対応すればいいのか分からず、男性の顔を見てしまいました。
困っていた私に、店長がかけた言葉
すると男性は、少し照れたように笑いました。
「おでんのつゆが大好きなんだよ」
「ああ、そうなんですね」
「これも好きだからさ。つゆにつけたら、うまそうだなと思って」
言いたいことは分かりました。確かに、好きなものを組み合わせてみたい気持ちは理解できます。
ただ、こんな注文を受けたことはありません。
私が返事に迷っていると、後ろでやり取りを聞いていた店長が近づいてきました。
「どうしました?」
事情を伝えようとすると、男性がもう一度、おでんのつゆに浸してほしいと話しました。
店長も困るだろうと思っていたのですが、返ってきたのは意外な言葉でした。
「ああ、そういうことですか。いいですね、やってみましょう」
私は驚いて、店長の顔を見ました。
店長はおでん用のカップにつゆを注ぐと、トングを使ってホットスナックを一本ずつ浸していきました。
カップから三本の串が突き出した、なんとも不思議な見た目です。
「おお、これこれ!」
男性はうれしそうに声を上げました。
会計を済ませると、さっそく一口かじります。
「……ああ、うまいな」
その満足そうな顔を見て、私もつい笑ってしまいました。
男性は店長にお礼を言うと、カップを大事そうに持って店を出ていきました。
実際に食べてみて分かったこと
その日の休憩時間、店長が私にも声をかけてきました。
「さっきの、ちょっと食べてみる?」
「えっ、本当にですか?」
店長は笑いながら、先ほどと同じようにホットスナックをおでんのつゆに浸してくれました。
正直、どんな味になるのか想像もつきません。
私はおそるおそるアメリカンドッグを一口かじりました。
「あれ、おいしいですね」
思わず声が出ました。
つゆを吸った衣がほんのり甘じょっぱくなっていて、意外にもよく合うのです。
「だろ? 意外といけるよな」
店長もフランクフルトを食べながら、笑っていました。
それからしばらく、店長と私の休憩時間のおやつは、おでんのつゆに浸したアメリカンドッグになりました。
今でも冬になると、あの男性のうれしそうな顔を思い出します。
あのとき店長が「やってみましょう」と言わなければ、私もこの組み合わせのおいしさを知らないままだったと思います。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














