「あの子のほうが、よっぽど分かってる」ブランコを譲らせなかった母親。だが、まだ遊びたかった息子の言葉に黙った瞬間
順番を待つ子どもたちと、譲ろうとしない母親
休日の昼、息子にせがまれて近所の公園へ出かけました。
息子のお目当てはブランコです。ただ、その公園には1台しかなく、すでに小学生くらいの子どもたちが4〜5人、順番を待っていました。
ブランコに乗っていたのは、5歳くらいの男の子です。楽しそうに足を動かし、何度も大きく揺れていました。
息子は列の長さを見て、私の隣で待つことにしたようでした。
ところが、10分近くたっても男の子は降りようとしません。待っている子どもたちも、少しずつ退屈そうな顔になってきました。
すると、列に並んでいた子のお母さんが、少し離れたベンチに座る女性に声をかけました。
「すみません。あの、そろそろ交代してもらえませんか?みんな待っているので……」
女性は携帯電話を見たまま、すぐには返事をしません。
「うちの子、まだ遊びたいみたいなんで」
どうやらブランコに乗っている男の子の母親のようです。
「そうなんですね。でも、ほかの子も乗りたがっていて…」
「嫌なら他の遊具で遊べばいいじゃないですか」
母親は面倒そうに答え、再び携帯電話に目を落としました。
声をかけたお母さんは困った顔で列に戻ります。待っていた子どもたちも、ブランコを見つめるばかりでした。
「ねえ、お父さん。あの子たち、ずっと待ってるよ」
息子が小さな声で言いました。
「そうだな。順番に遊べるといいんだけどな」
私も気になっていましたが、母親の返事を聞いたあとでは、なかなか声をかけられませんでした。
「まだ乗りたいけど」男の子が自分で決めたこと
そのとき、ブランコに乗っていた男の子が、こちらを振り返りました。
大人たちの会話が聞こえたのでしょうか。男の子は列に並んでいる子どもたちを見て、少し驚いたような顔をしました。
そして、足を地面につけて、ゆっくりブランコを止めたのです。
「ママ、ぼく、交代する」
その声に、ベンチの母親が顔を上げました。
「え?もういいの?」
「うーん、まだ乗りたいけど、みんな待ってるから」
男の子は少し名残惜しそうにブランコを見つめてから、座面を降りました。
そして、先頭の子に鎖を差し出します。
「はい、どうぞ」
「ありがとう!」
男の子はにっこり笑い、今度はすべり台のほうへ走っていきました。
ベンチの母親は、しばらくその様子を見ていました。
近くにいた保護者が、小さな声でつぶやきます。
「えらいね。あの子のほうが、よっぽど分かってる」
母親は何も言わずに携帯電話をしまい、男の子のあとを追っていきました。
すると、隣にいた息子が私の手を引きました。
「お父さん、あの子かっこいいね」
「うん。まだ遊びたかっただろうに、ちゃんと代わってあげたもんな」
ブランコでは、待っていた子どもたちが順番に遊び始めていました。
自分だってまだ遊びたい。それでも、ほかの子のことを考えて行動できた男の子の姿が、私にはとても印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














