「じゃあ、ぼくの大学は?」夫が突然披露した車。購入代金の出どころを知った息子の一言で、夫の笑顔が消えた
大学費用のために残しておくはずだったお金
7年ほど前、自営業の夫の仕事で、まとまったお金が入ったときの話です。
当時、息子は高校生。これから大学進学にお金がかかることを考えると、家計には少し不安がありました。
夫と二人で通帳を確認したとき、私はほっとしたのを覚えています。
「これで、あの子の大学もひと安心だね」
「そうだな。これは使わずに取っておこう」
夫もそう言ってうなずいたので、私はすっかり安心していました。
ところが、それから少したったある夜のことです。
夫が帰ってくるなり、うれしそうに私と息子を呼びました。
「二人とも、ちょっと外に来て。サプライズがあるんだ」
「え、何?」
「いいから、来てみてよ」
私は近くのお店にでも連れていってくれるのかと思い、エプロンを外しました。息子も「何だろう」と言いながら上着をはおっています。
玄関を出ると、夫は駐車スペースのほうを指さしました。
そこには、見覚えのないぴかぴかの車がとまっていたのです。
「えっ、これ、どうしたの?」
「友達が手放すって言うから、買ったんだ。状態もいいだろ?」
夫は車のボディをなでながら、満足そうに笑っていました。
私は驚きましたが、それ以上に気になったことがありました。
息子の一言に、夫が言葉を失った
「買ったって……相談もなかったよね?」
「急な話だったから、その場で決めちゃったんだよ」
「でも、車なんて大きな買い物でしょ」
「家族が喜ぶと思ったんだよ。みんなで使えるしさ」
夫は悪気のない様子で答えました。
確かに、家族で使える車があれば便利でしょう。でも、どうしても確認しなければならないことがあります。
「ねえ、その車のお金はどうしたの?」
「この前、仕事で入ったお金から出したよ」
その返事を聞いて、私は言葉を失いました。
「……あのお金、息子の大学費用に取っておくって話したよね?」
夫は一瞬、きょとんとした顔をしました。
その横で、黙って話を聞いていた息子が口を開きました。
「…じゃあ、ぼくの大学は?」
夫の手がぴたりと止まりました。
「あ…」
さっきまであんなにうれしそうだったのに、みるみる表情が曇っていきます。
どうやら、大学費用として残す約束をしていたことが、頭から抜けていたようでした。
私も、何と言っていいのか分かりませんでした。
家族を喜ばせたかったという気持ちは分かります。でも、息子の進学に関わるお金を、相談もなく使ってしまったことは簡単に受け入れられません。
それからしばらく、私は夫と口をききませんでした。
夫は毎朝車を洗っていましたが、ときどき窓越しにこちらの様子をうかがっていました。
その後、夫は仕事に精を出し、幸いにも息子の大学費用はなんとかそろいました。
一方、あの車は引っ越しや息子の送り迎え、家族旅行などで大活躍しました。
今では家族が集まると、誰かがふざけて夫の口まねをします。
「サプライズがあるんだ!」
すると、みんなで大笑い。夫は少し気まずそうに肩をすくめています。
無事に大学費用を用意できたからこそ、今では笑い話になっています。
それでも、あの夜の息子の一言と、夫の慌てた表情は、今も忘れられません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














