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2026.10.21(Wed)

「お母さん、早くたたんで。恥ずかしいよ」運動会で大きなタープを広げていた母親。だが、娘の一言で黙り込んだ瞬間

「お母さん、早くたたんで。恥ずかしいよ」運動会で大きなタープを広げていた母親。だが、娘の一言で黙り込んだ瞬間

観覧スペースを占める大きなタープ

娘が中学生だったころ、妻と運動会を見に行ったときのことです。

運動場の観覧スペースは限られていて、保護者たちは小さなテントやレジャーシートを詰めて並べていました。

私たちが着いたころには座れる場所がなく、妻と一緒にシートの並びの後ろに立つことにしました。

「今年は立ち見だな」

「仕方ないわよ。娘の出番が見えれば十分でしょ」

妻はそう言って笑いましたが、前方を見て表情を曇らせました。

ほかの家族がシートを寄せ合っている中、一か所だけ大きなタープが張られていたのです。

その下にはキャンプ用のテーブルと椅子が置かれ、夫婦らしい男女がゆったりと座っていました。女性は足を組み、テーブルのお菓子をつまんでいます。

周囲には立ったまま観覧している保護者も多く、何人かがタープのほうに視線を向けていました。

しばらくすると、子どもを抱いた保護者がタープのそばへ歩み寄りました。

「あの、すみません。もう少しだけ詰めてもらえませんか?」

すると、椅子に座っていた女性が顔を上げました。

「えっ? 先に来た者勝ちでしょ。うちは朝早くから並んだのよ」

「そうですけど、立っている人も多いので……」

「だから、早く来ればよかったじゃない」

女性はそう言って手を振り、話を終わらせてしまいました。

声をかけた保護者は困ったように頭を下げ、元の場所へ戻っていきました。

私も妻と顔を見合わせましたが、何も言えませんでした。

昼休み、娘が母親に言った一言

昼休みになると、運動場に先生の声で放送が流れました。

「場所が取れなかったご家族もいらっしゃいます。少しずつ詰めていただくよう、ご協力をお願いします」

周囲では保護者たちがシートの端を折り、少しずつ場所を空け始めました。

ところが、タープの女性は動こうとしません。

「早く来た人が損するなんて、おかしいでしょ。たたむ気なんてないから」

周りにも聞こえる声でした。

そのとき、体操服姿の女の子が昼食をとりにタープへ戻ってきました。その女性の娘でした。

女の子は母親の前で足を止め、周囲を見回しました。

近くではシートを詰めている家族がいて、立ったままの保護者たちの視線もタープに集まっています。

女の子はその様子を見て、顔を真っ赤にしました。

「お母さん、早くたたんで。恥ずかしいよ」

母親は驚いたように娘を見ました。

「えっ、何言ってるの。せっかく朝から……」

「もういいから。お願い、たたんでよ……」

娘はうつむいたまま、母親のそばを離れません。

母親は何か言いかけましたが、娘の表情を見て口をつぐみました。

しばらくして、母親はゆっくりと椅子から立ち上がり、タープの支柱に手をかけました。

やがて大きなタープが畳まれると、周囲でもシートの位置を調整し直し、立っていた人たちが座れる余裕ができました。

母親は畳んだタープを足元に置き、周囲と目を合わせようとはしませんでした。

「あなた、ここ座れるわよ」

妻に呼ばれ、私もようやく腰を下ろしました。

午後、娘の出番が来ると、私たちは座ったまま精いっぱい拍手を送りました。

あれだけ頑として場所を譲らなかった母親が、娘の一言で黙って立ち上がった光景は、今でも忘れられません。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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