「勝手に水をやったんでしょ!」と観葉植物の責任を、朝礼のあとに新人の私に押しつける先輩。その先輩が言葉を失った
朝礼のあと、鉢の責任を押しつけられて
先輩は皆の前で、鉢の責任を私に押しつけました
四月の朝礼のあと、窓際の観葉植物に元気がないと、部長が言い出しました。
部長が自分で選んだ、2万4千円の観葉植物です。
私は毎朝、コップの水を飲み、残りを自分の机の端に置いた小さな鉢にやっています。
その日も朝礼を終え、コップと書類を持って席へ戻ろうとすると、先輩が腕を組んで私の前に立ちました。
部長はその後ろで、黙って見ています。
「勝手に水をやったんでしょ!枯らしたんだから弁償して!」
先輩は皆に聞こえる声で続けました。
『枯らしたのは、新人の君だ。鉢に触ったんでしょう』。
どうやら、私が勝手に水をやったせいで観葉植物の調子が悪くなったと言いたいようです。
しかし、私は触っていません。入社した日に『あの棚の鉢には触らないで』と言われ、水やりは先輩ひとりの当番だったからです。
部長が大切にしている鉢なので、水やりをした日を記録表に残す決まりにもなっていました。
先輩は朝一番に毎日水をやったと言い切り、部長がうなずきます
私は何も言い返せませんでした。
先輩は誰より早く出社する人で、水やりをする時間の事務所には、いつも先輩しかいません。
実際に水をやっているところを見た人は、ひとりもいないのです。
『触っていません』と言っても、それを証明する方法がありません。
食い下がれば、新人が先輩に逆らったと見られるだけです。
部長は先輩の言葉にうなずくだけで、私の話を聞く様子はありませんでした。手の中のコップの水が、小さく揺れました。
「毎日、朝一番に。あの鉢にも必ず。」
「今朝もやった。夕方はやらない。」
先輩はそう言い切って、私をにらみました。
言い返せなかった私が、コップを手に動くと
私がコップの水を注ぐと、水は土にうまく染みこまずに流れ出ました
私は口を結んで、窓際の鉢を抱えて戻り、先輩の机の端に置きました。
持ち上げた鉢は、思ったよりも軽く感じられました。触るなと言われていても、この目で確かめたかったのです。
土の表面は白い化粧石に覆われていて、外から見ただけでは土の状態が分かりません。
私は手にしたコップの水を、そっと鉢に注ぎました。
「水が、土に入っていきません。」
水は化粧石の隙間を通って土の表面に広がりましたが、なかなか染みこみません。
一部は鉢の内側を伝い、底の穴から受け皿へ流れ出ていきます。
化粧石を少しずらして確かめると、下の土はひどく乾燥していました。
乾いた土が水をはじくことはあります。
ただ、それだけで先輩が水やりを怠っていたと決めつけることはできません。
部長が鉢の縁に手を添え、受け皿にたまっていく水を見つめます。
私は部長に、水やりの記録表を確認してほしいと頼みました。
部長が棚の引き出しから取り出した記録表には、先々週の木曜日まで日付とチェックが並んでいました。
しかし、その翌日からの欄は空白のままです。
部長が記録表を先輩に見せると、先輩の目が止まりました。さっきまで胸を張っていた先輩の肩が、わずかに下がりました。
先輩は空のじょうろを両手で持ったまま、目を伏せました
先輩の口の端が引きつり、机の脇のじょうろに手が伸びました。
「昨日の朝に、やったわよ!」
「今朝やった鉢なら、水は染みこみます。」
私は思わずそう言いました。もちろん、土の乾き具合だけで水やりの有無を判断することはできません。
しかし、先輩はつい先ほど、今朝も必ず水をやったと言い切っていたのです。
今度は昨日の朝だと言い出したことに、部長も不審そうな顔をしました。
部長は記録表を指さし、空白になっている期間の水やりについて、先輩に確認しました。
先輩はじょうろを持ったまま黙り込みました。やがて、観念したように小さな声で話し始めました。
『先々週の金曜から、一度も水をやっていません。叱られるのが怖くて、新人のせいにしました。弁償は、私が持ちます』。
先輩はそう認めました。事務所は静まり返っています。部長は弁償については即答せず、まず観葉植物の状態を確認することにしました。
それ以上何も言えなくなった先輩は、空のじょうろを両手で持ったまま、目を伏せました。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














