「客なんか、1回も泊めたことない」相場の半分で借りた部屋に、持ち主の姉を上げない弟。2階を見上げて退散
通りに面した2階の部屋
貸した部屋へ向かうと、弟が先に下で待っていました
マンションの前の植え込みのところで、弟が入口への道をふさいで立っていました。
肩で息をしています。
通りに面した2階の2LDKは、私が独身のころに買った部屋です。
今の家に移ってから、ひとりで住むこと、夜は静かにすることを約束に、弟へ相場の半分で貸しています。
先週、管理会社から私に電話がありました。
見かけない自転車が増え、知らない男性が何人も出入りしているとのことでした。
日曜の昼、『今から行く』と弟に電話すると、出先にいた弟は急いで駆けつけ、私より少し早く到着したようです。
部屋に戻らず、入口で私を待ち構えていたのでした。
弟は、私の顔を見るなり言いました。
「部屋には、上げないから。」
弟は、住むのは自分ひとりで布団も1組だけだと言いました
管理会社の話を伝えると、弟は鼻で笑いました。
「住むのは俺ひとり、布団も1組だけ。」
「客なんか、1回も泊めたことない。」
安く借りている部屋のことなのに、弟の声には少しの迷いもありません。
部屋に上げてもらえないまま、私は弟に見下ろされました
「出入りしてるのは、隣の部屋だろ。」
「姉ちゃんは、いい顔したいだけ。」
部屋を貸している以上、弟がうんと言わなければ、私は鍵を持っていても勝手には入れません。
管理会社も、何人住んでいるかまでは確認できていません。
私の手もとにあるのは、電話で聞いた話だけです。
頭ひとつ背の高い弟に見下ろされ、私はバッグのひもを握ったまま、何も言えませんでした。
「姉ちゃんは、いい顔したいだけ」
弟は、部屋には自分の物しか置いていないと言いました
弟は、入口のほうへ一歩寄って続けます。
「部屋には、俺の物しか置いてない。」
「わかったら、もう帰って。」
そのとき、頭の上のほうから、ぱん、ぱん、と何かをたたく音がしました。
弟は、私をにらんだままです。私は、音のするほうを見上げました。
弟の部屋の手すりに、布団が4組干してありました
2階の弟の部屋のベランダの手すりに、布団が干してありました。緑、えんじ、紺、からし色。布団が、4組。
その奥で、白いTシャツの男性が、布団たたきを振っています。弟はここにいるのに、弟の部屋には、知らない男性がいる。
私の視線に気づいて見上げた弟が、声を張り上げました。
「あいつらは、ゆうべ泊まりに来た客!」
「泊めたことない、と言ったのはあんた。」
1組だけのはずの布団が、4組。
来客用の布団があっても不思議ではありません。しかし、弟は先ほど、客を一度も泊めたことがないと言っていました。
それなのに、今度は昨夜泊まりに来た客だと説明しています。明らかにつじつまが合いません。
私が黙って弟の顔を見つめると、弟は何か言い返そうとして、口を閉じました。
弟は背中を丸め、入口のほうへ引き上げていきました
やがて弟の肩が落ち、低い声がもれました。
「3人から、ひと月1万5千円ずつ。」
友人3人からお金を受け取り、4人で住んでいたと言います。
私から電話を受けたあと、部屋にいる友人たちにも連絡しようとしたものの、誰も電話に出なかったそうです。
「来月、4人とも出ていって。」
弟はうつむいたまま、背中を丸めて入口へ引き上げていきました。
もちろん、私の一言だけで退去が決まるわけではありません。
これから契約内容を確認し、管理会社にも相談しながら、必要な手続きを進めるつもりです。
身内だからと安く貸した部屋で、約束を破られていたことが何よりも残念でした。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














