「ここは俺の席だ!」4人掛けの座席を独占する男性。誰もが避けるなか、若い乗客が見せた対応
駅に止まるたびに響いた怒鳴り声
日曜日の午前、20代だった私は、長距離の移動で地方の電車に乗っていました。
乗ったときは空いていた車内も、駅に止まるたびに乗客が増え、少しずつ混みはじめていました。
私が座っていた補助席のすぐ前には、4人掛けのボックス席がありました。
そこには50代くらいの男性が一人で座り、向かいの座席に両足を投げ出していたのです。隣の席には上着を広げ、4席すべてを使っていました。
最初に声をかけたのは、手すりにつかまっていた年配の女性でした。
「すみません、こちら、座ってもいいですか?」
すると男性は、顔も上げずに怒鳴りました。
「ほかへ行けよ。ここは俺の席だ!」
女性は驚いたように小さく頭を下げ、その場を離れました。
次の駅では会社員風の人が、その次の駅では学生が座ろうとしましたが、男性はそのたびに大声で追い返しました。
「だから、ここは俺が使ってるんだよ!」
すでに3人が断られ、周囲の乗客も男性を避けるようになっていました。
私も怖くて何も言えず、補助席からその様子を見ているだけでした。
「いえ、みんなの席です」と3度返した乗客
やがて通路にも立っている人が増えてきたころ、大きなリュックを背負った若い男性が乗ってきました。
若い男性はボックス席の前で立ち止まり、座面に投げ出された足を見て声をかけました。
「すみません。ここ、座ってもいいですか?」
「はあ?俺の席だって言ってるだろ!」
また怒鳴り声が響きました。
しかし、若い男性は声を荒らげることなく、静かに答えました。
「いえ、みんなの席です」
「なんだお前。俺が先に座ってるんだぞ!」
「いえ、みんなの席です」
「だから!俺が使ってるって言ってるだろ!」
「いえ、みんなの席です!」
若い男性は、まったく同じ言葉を3度くり返しました。
言い返して口論になるわけでも、相手を責めるわけでもありません。ただ、落ち着いた声で答えていたのです。
男性は何か言いかけましたが、やがて黙り込みました。
そして、向かいの座席からゆっくりと足を下ろし、隣に広げていた上着も自分の膝に引き寄せました。
若い男性が向かいの席に座ると、先ほど追い返されていた年配の女性と学生も、ためらいながら空いた席に腰を下ろしました。
ようやく4席すべてに人が座れたのです。
男性は不機嫌そうに腕を組み、目を閉じました。それからは、一度も怒鳴りませんでした。
私の横に立っていた女性が、小さな声でつぶやきました。
「あの人、すごいですね」
私も思わずうなずきました。
若い男性はリュックを膝に抱え、何事もなかったように窓の外を眺めています。
怒鳴り返さず、必要なことだけを伝える。その落ち着いた姿が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














