「瓦を割ったな。2万6千円払え」と屋根に上ったと決めつける義父。数分後、庭先で深く頭を下げた
庭先で突きつけられた請求
義父が、割れた瓦の修理代を払えと迫ります
十月の日曜日、泊まりで訪れた夫の実家の庭で、私は草取りを手伝っていました。
夫と義母は買い物に出ていて、庭には義父と私だけです。
そこへ縁側から降りてきた義父が、いきなり言いました。
「瓦を割ったな。2万6千円払え。」
何のことか分からず、私は軍手をはめた手を止めました。
昨日の午後3時ごろ、母屋の南側の大屋根の瓦を、私が割ったというのです。
義父は、私が納屋の梯子を使って屋根に上ったと決めつけていました。
この家には一階部分に張り出した下屋がなく、屋根へ上るには地面から直接梯子を掛ける必要があります。
「下屋はない。大屋根に掛けた。」
腕を組んだ義父は、私から目をそらしません。
割れた瓦の話など、今朝まで一度も聞いていません。
もちろん、屋根に上った覚えもありません。
結婚して三年、義父とは用事のほかに話したこともなく、私は胸の奥が冷たくなるのを感じました。
昨日の午後3時に屋根へ上ったと、義父は一方的に決めつけています
昨日の3時、私は庭の隅で草を抜いていました。
夫は仕事の用事で出かけ、義母は友人の家で、家にいたのは義父と私だけです。
庭からは屋根の上のようすまで確認できず、私が上っていないことを証明できる人もいません。
義父は私が梯子を使うところを見たとは言わず、ただ自分の言い分を繰り返すばかりでした。
これまでも、義父の言い分がそのまま通ってきました。
言い返す言葉を探しても、義父の前では喉の奥で止まってしまいます。
「納屋の梯子は一本物だぞ。」
納屋の梯子を勝手に出して屋根に上った。義父はそう言い切ります。
「継ぎ足しも踏み台もなし。」
『払わないなら、息子にも話す』。夫にまで一方的な話が伝わり、私の言い分を聞いてもらえなくなるのが怖くて、私は言い返せませんでした。
夫の父という立場の前で、私はたった一人でした。
義父に連れられて納屋の前へ
梯子の先が一階の窓の高さで止まるのを、私は見上げました
「来い」と短く言った義父の背中を追って、私は庭の砂利を踏み、納屋の前まで来ました。
義父は長年使われていなかった古い梯子を奥から引き出し、母屋の壁に立てかけます。『この壁に立てて、屋根へ上ったんだ』。
それは古い木製の一本梯子で、継ぎ目も、伸ばす仕掛けもありません。
私は梯子の先から、壁の上のほうへ、ゆっくり目を動かしました。
梯子の先は一階の窓の高さで止まり、その上には二階の窓と軒、さらに大屋根が続いています。
どう見ても、この梯子だけで屋根まで届くとは思えません。
「梯子の先は、一階の窓までです。」
義父は梯子の脇で、私に深く頭を下げました
義父は梯子の先と軒を、何度も見上げました。口を開けかけて閉じました。
「軒に掛けたんだ!」
「軒なら梯子の倍は要ります。」
梯子の先は、軒どころか二階の窓にも届きません。
義父は梯子の脇で、片腕を軒へ向けて高く伸ばし、その遠さを確かめました。
私は何も責めず、ただ黙って、そのようすを見ていました。
義父は眉を寄せ、口の端を引きつらせています。自分が持ち出した梯子では屋根に上れないことが、目の前ではっきりしたのです。
しばらく黙り込んだあと、義父はようやく本当のことを話し始めました。
『先週の風で、瓦が一枚割れていた。見積もりが2万6千円と聞いて、惜しくなった。息子には、言わんでくれ』。
義父の話では、先週の強風のあとに瓦の破損が見つかり、すでに修理の見積もりを取っていたそうです。
昨日の午後3時というのは、私が庭にいた時間を持ち出しただけでした。
義父は梯子の長さを確かめもせず、私に修理代を負担させようとしていたのです。
2万6千円の請求は、そこで取り下げられました。義父は腕を下ろし、私に深く頭を下げました。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














