tend Editorial Team

2026.05.06(Wed)

「お願いしていい?」祖父の葬儀で全ての決めごとを担った私→最後まで聞こえてこなかった家族の一言の重さ

「お願いしていい?」祖父の葬儀で全ての決めごとを担った私→最後まで聞こえてこなかった家族の一言の重さ

座ったままの父と兄弟

祖父の通夜の支度が始まる頃、実家の居間には10人ほどの親族がぎっしりと座っていた。

座布団の上で正座している父は喪主、その横で母がぼんやり遺影を眺めている。

兄と弟は、お茶を入れる気配もなく茶菓子に手を伸ばしていた。叔父叔母は線香の煙を見上げながら、世間話とも近況報告ともつかない声で言葉を交わしている。

そこへ、葬儀屋の担当者が打ち合わせ資料を持って入ってきた。お花、棺、香典返し、お返しの品。決めごとは細かく、どれもこの家のしきたりに関わる話だった。

担当者の目線が、いったん父のほうへ流れた。けれど父はじっと畳に視線を落としていて、何も応えない。

「お願いしていい?」

その声が、なぜか私のほうへ向けられていた。

父も、母も、兄弟も、ひとこと「俺がやる」とは言わなかった。私が頷いた瞬間、その場の責任は静かに孫娘の私だけに移った。

届かなかった「お疲れ様」の一言

そこから一日中、私は親族のあいだを行き来し続けた。叔父叔母にお花の種類を確認し、母には香典返しの予算を聞き、葬儀屋に戻って書類に書き込む。

「お茶、もうないんじゃない?」

誰かが小さく呟いた。私は車のキーを取り、近所のスーパーへ走った。お茶のペットボトルとお菓子を抱えて戻ってきても、玄関で「ありがとう」と言ってくれる人はいなかった。

打ち合わせが終わったのは、外がすっかり暗くなった頃だ。座布団の片付けを始める私の横を、父は風呂へ消え、兄と弟はテレビをつけ直し、母は仏壇の前で手を合わせていた。

「お疲れ様」

本当はその一言だけ、誰でもいいから言ってほしかった。耳の奥でずっと待っていたその言葉は、結局その夜、誰の口からも出てこなかった。

葬儀屋に名指しされた瞬間、家族の誰一人として代わろうとしなかったこと。買い出しも、確認作業も、当たり前のように私の役割になっていたこと。それでも誰も、その役割に対して言葉をかけてくれなかったこと。

「家族」という関係のなかで、私はどう数えられていたのだろう。流し場の蛇口をひねりながら、答えの出ないまま、私は喪服のボタンをひとつ外した。祖父の遺影に向かって、ようやく小さく「お疲れ様」と呟いたのは、自分自身に対してだった。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.05.06(Wed)

「もう他人ですので、無理です」離婚後にも続いた元旦那一族からの図々しい連絡→従兄弟の告白に背筋が凍った夜
tend Editorial Team

NEW 2026.05.06(Wed)

「今月厳しいから10万援助して」車検代の返済中に義母から飛んできた追加要求→断った私への返答に絶句
tend Editorial Team

NEW 2026.05.06(Wed)

1日1万歩は科学的根拠なし?健康の新常識「8000歩」がもたらす衝撃と、ネット上で渦巻く納得の理由
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.01.12(Mon)

「私の財布から金盗んだでしょ!」と叫ぶ認知症の祖母→ベビーカメラが映した真犯人とは【短編小説】
tend Editorial Team

2025.12.09(Tue)

小泉純一郎元首相(83)最新近影に「心配です」の声続出 白鵬翔さんらとの集合ショットで見せた『顔のあざ』に注目集まる
tend Editorial Team

2025.12.24(Wed)

「流石にもう限界」「運転させたらダメ」と厳しい声。広末涼子、4月の追突事故で略式起訴をうけ事務所が謝罪
tend Editorial Team