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2026.05.29(Fri)

「兄貴が勝手に母を施設に入れたんでしょ」介護を全部断った妹が母の死後に詰めてきた。食い違う意見に抱えたジレンマ

「兄貴が勝手に母を施設に入れたんでしょ」介護を全部断った妹が母の死後に詰めてきた。食い違う意見に抱えたジレンマ

四十九日のあとに鳴った電話

母を見送ってひと月ほどが経ち、ようやく仕事に頭が戻りかけた頃でした。

私のスマートフォンに、しばらく途絶えていた妹からの着信が入りました。

関東で会社員をしている私と、東北で母の家から近い場所に暮らしていた妹。

距離も生活も違う五十代の兄妹で、ここ数年はろくに連絡も取っていなかったのです。

母が亡くなって以来、葬儀の場でも妹はあまり言葉を交わそうとしませんでした。

何かを溜め込んでいることだけは、横顔から伝わってきます。

受話器を取った私に、妹はいきなり厳しい声で切り出しました。

「兄貴が勝手に母を施設に入れたんでしょ」

言葉の意味を理解するまで、少しの間が必要でした。

耳に届いた音と、自分の中にある記憶が、まるで別の出来事のように噛み合わなかったのです。

介護を断ったのは妹のほうだった

母が退院後に独歩できなくなった頃、私は何度も妹に相談を持ちかけていました。

仕事を抱えた身では平日の介護に入れず、近くにいる妹の力が必要だったからです。

そのたびに返ってきた答えは、はっきりとしたものでした。

「その人の介護なんて私にはできない」

母を「その人」と突き放した響きを、私は今でも忘れていません。

会話を続ける気力が削られて、最後には妹のほうから連絡を絶ってしまっていたのです。

結果として、母とも何度も話し合いを重ねた末に、近くの介護施設へ入所してもらうことになりました。

母自身が「私はもう一人では暮らせないわ」と納得した上での選択でした。

その経緯を、いま電話の向こうの妹は知らないことにしているように聞こえました。

あるいは、自分にとって都合の悪い記憶を、本当に手放してしまったのかもしれません。

説明する力さえ残らなかった夜

受話器越しの罵倒は、一方的に長く続きました。

私は何度か口を開きかけて、結局そのまま黙って聞いていたのです。

母が亡くなった朝、施設に駆けつけたとき、枕元には誰もいませんでした。

寂しい最期を取り戻すことは、もうできないという事実だけが、あの朝以来ずっと胸に居座っています。

その重さに比べると、妹の言葉に向き合うエネルギーが、自分の中にもう残っていないと気づきました。

「そう思っているのなら、それでいい」

結局、私はそれだけを答えて電話を置きました。説き伏せても誰も救われないと、五十年生きてきた感覚が静かに告げていたのです。

胸の中に残ったのは、妹への怒りでも、自分の正しさでもありませんでした。母の最期に間に合わなかった一点だけが、今も澱のように沈んでいます。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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