「静かにしろ、迷惑だ!」共用廊下で遊んでいた子を怒鳴った住民。だが、母の一言に態度を変えたワケ
ドア越しに聞こえた大声
買い物から戻り、玄関で靴を脱いでいると、共用廊下から男性の大声が飛び込んできた。少し前まで、娘と友だちが小さなボールで遊んでいたはずだった。
荷物を置いて、私は急いで外に出た。
「静かにしろ、迷惑だ!」
ドアを開けると、同じ階に住む中年の男性が、子どもたちを見下ろすように怒鳴っていた。娘は肩をすくめ、今にも泣き出しそうな顔をしている。友だちの子も、うつむいたまま動けずにいた。
廊下でのボール遊びが褒められないのは、私にも分かる。音は響くし、通る人の邪魔にもなる。それでも、大人がここまで声を荒らげてぶつける相手は、まだ小学校にも上がらない子どもたちだった。
母が返した静かな一言
私は娘たちのそばに駆け寄り、まず二人の肩に手を置いた。それから男性のほうへ、きちんと頭を下げた。
「気をつけます。すみません」
そのあと、しゃがんで子どもたちに言い聞かせた。「廊下は走る場所じゃないよ。遊ぶなら、公園に行こうね」。子どもたちは、こくりと素直にうなずいてくれた。
それから私は立ち上がり、まだ震えている娘を背にかばうようにして、男性へ静かに向き直った。
「言い方が怖いですよ」
私が穏やかにそう告げると、男性の表情がわずかに揺れた。子どもは、叱られた中身よりも、怒鳴られたという恐怖のほうだけを覚えてしまう。
せっかくの注意も、これでは何も伝わらない。
廊下の空気が変わった
「怒鳴らなくても、言えばちゃんと伝わります。この子たちも、話せば分かる子たちですから」
男性は口をへの字に曲げ、言い返そうとして、結局は何も言えなかった。ばつが悪そうに、視線をあちこちに泳がせている。
反論の言葉を探しても、正しいのは自分だと言い切れないのだろう。
男性は気まずそうに目をそらし、足早にその場を離れていった。
数日後、掲示板には管理人さんの案内が貼られた。共用部で過度に大声をださないでほしい、という短い一文だった。あの日の出来事を、きっと周りの誰かが管理人さんに伝えてくれたのだろう。廊下で顔を合わせる住人たちが、以前より少しだけ言葉をかけ合うようになった気がする。
今では娘は、あの廊下ではなく、公園でのびのびとボールを追いかけている。エレベーターであの男性とすれ違っても、気まずそうに先に目をそらすのは、決まって彼のほうだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














