叔父「喪主が全額負担して当然」→妻「一律で御供物料を集めてあります」15人の前で財布を出した男
親戚の前で押し付けられた費用
亡くなった父の法事を、長男の私が取り仕切ることになりました。
当日は遠方の親戚も顔をそろえ、久しぶりに一族が集まる場となりました。
法要が滞りなく終わり、会食に移ろうとした矢先のことです。何年も顔を見せていなかった叔父が、みんなの前で声を張り上げました。
「喪主が全額負担して当然だろ」
お布施も会食代も、仕切る人間が持つのが昔からの決まりだ。
叔父はそう言い切って、腕を組みました。
正直、その費用は決して軽いものではありません。それでも他の親戚は、関わりたくないとばかりに視線をそらします。
「そうよねえ、長男がねえ」と曖昧な相づちを打つ声すら、叔父の勢いを後押ししているようでした。
私は唇を結んだまま、何も言い返せずにいました。父を悼む席で、みっともなく言い争う姿を見せたくなかったのです。
妻の一言で入れ替わった空気
沈黙を破ったのは、隣に座っていた妻でした。妻は表情ひとつ変えず、穏やかに口を開いたのです。
「一律で御供物料を集めてあります」
今日のために、事前に皆さまから同じ額でお預かりしています。
会食もお布施も、そこからきちんと出させていただきます。妻はそう言って、集めた控えを静かに示しました。
叔父の勢いが、そこでぴたりと止まりました。
「な、なんだ、そんな段取りが…」と口ごもり、組んでいた腕がほどけていきます。
先ほどまで叔父に流れていた空気が、まるごと入れ替わった瞬間でした。
叔父はばつが悪そうに咳払いをして、財布から御供物料を取り出しました。
誰よりも払わせようとした人が、誰よりもきまり悪そうに財布を開ける。その姿に、私は思わず胸のすく思いでした。
「叔父さんも、どうぞよろしくお願いします」
妻がにこやかに差し出した封筒を、叔父は黙って受け取り、そそくさと席についてしまいました。あれほど大きかった声は、もう聞こえてきません。
会食の間、叔父は一度もこちらと目を合わせようとしませんでした。理不尽に押し付けようとした企ては、妻の落ち着いた一手であっけなく崩れたのです。
帰り道、私は妻に何度も礼を言いました。「揉めずに済ませるのが一番でしょう」と笑う妻の横顔が、いつになく頼もしく見えた一日でした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














