母「買い出しに連れて行ってほしい」→友人との食事を早めに切り上げた私に、母が放った信じられない一言
友人との約束を、早めに切り上げて
その日、私は数ヶ月ぶりに友人とランチをする約束をしていた。
予定の朝、母から頼まれごとをされた。
「夕飯の材料が切れてしもてね。悪いけど、買い出しに連れて行ってほしいんよ」
母は車を持っていない。毎週の買い物は、私が車を出すのが習わしだった。何年も続けてきたことだから、断るという発想すら、もう私の中にはなかった。
今日はランチのあとでいいならと、私は引き受けた。
友人との時間は、名残惜しかった。話し足りないまま、私は「ごめん、母を買い物に連れて行かなきゃ」と席を立ち、車を走らせて家へ急いだ。約束の時間に遅れないよう、道はいつもより混んで見えた。
ところが、玄関を開けると、母はすでに夕飯の支度を始めていた。
「あ、おかえり。買い物、もう行かんでええわ。近くまで歩いて、ちょっとだけ買うてきたんよ」
拍子抜けした。それなら、友人ともっとゆっくりできたのに。
「連絡くれたら良かったのに。私、そのために早く帰ってきたんよ」
すると母は、悪びれもせずに言った。
「そんなん知らんわ」
その一言に、胸の奥がすっと冷えた。
頼んだのは母のほうなのに、振り回された私の一日は、なかったことにされてしまう。
「私にも予定がある」と告げて
これまでの私なら、そこで黙り込んでいた。母に逆らうのが怖くて、言いたいことを飲み込んで。
でも、この日は違った。エプロン姿の母に、私はまっすぐ向き合った。
「お母さん、聞いて。私は今日、友達との約束を切り上げて帰ってきたの」
「そうなん」
「うん。だから、予定が変わるかもしれないときは、先に一本だけ連絡して」
「私にも予定があるの」
「お母さんを大事にしたい気持ちは、ずっと変わらない。でも、私の一日も、同じくらい大事にしたいの」
母は、決まり悪そうに口ごもった。何か言いかけては、飲み込む。しばらくして、ようやく小さくうなずいた。
「……そうやね。悪かった。今度から、ちゃんと連絡するわ」
長いあいだ、当たり前のように差し出してきた私の時間。その線を、初めて自分で引けた瞬間だった。
それから母は、予定が変わるたびに、きちんと電話をくれるようになった。「無理せんでええからね」と、こちらを気遣う言葉まで添えて。
翌週、私はもう一度、友人をランチに誘った。今度は時計を気にせず、心ゆくまで笑って過ごせた。自分の時間を守ることは、母を切り捨てることではない。そう思えた、穏やかな午後だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














