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2026.06.23(Tue)

「食べきれないからどうぞ」断れず受け取り続けた手作り品→ゴミの収集日を境に二度と来なくなったワケ

「食べきれないからどうぞ」断れず受け取り続けた手作り品→ゴミの収集日を境に二度と来なくなったワケ

受け取るたびに困っていた

夕方になると、決まって玄関のチャイムが鳴った。立っているのは、料理好きの隣人だ。

「食べきれないからどうぞ」

手のひらに乗せられるのは、いつも火を通さずに食べる手作り品だった。

漬物だったり、和え物だったりする。市販のものなら気にならない。でも、加熱しないものを口にするのは、衛生面でどうしても抵抗があった。

「すみません、いつもいただいて」

「いいのいいの、たくさんあるから」

断る言葉が、喉まで出かかっては引っ込む。すぐ隣に住んでいる相手だ。要らないと言って気まずくなれば、この先ずっと顔を合わせづらくなる。結局その日も、私は笑顔でタッパーを受け取ってしまった。

「ありがとうございます。大切にいただきますね」

そう言いながら、心の中ではもう、これをどう処分しようかと考えていた。

罪悪感をのみ込んで

いただいたものは、いつもゴミの日にそっと出していた。

袋の口を結ぶたびに、手が止まる。

せっかくの厚意を、口もつけずに捨てている。もらっておいて捨てるなんて、ひどい人間だと自分でも思う。その後ろめたさが、収集日のたびに胸を重くした。

「正直に言えたら、こんな気持ちにならないのにね」

「次は、いただく前に断ってみたら?」

「それができたら苦労しないよ。あの笑顔の前で、要らないなんて言えると思う?」

夫に相談しても、答えは見つからなかった。あの人は悪気があるわけじゃない。むしろ親切で言ってくれている。だからこそ、要らないとは言い出せなかった。傷つけるくらいなら、自分が黙って抱え込むほうがいい。

そう思って、私は何ヶ月もこの気まずさを一人でのみ込み続けていた。

チャイムが鳴らなくなった夕方

状況が変わったのは、私が何かをしたからではなかった。

後から知った話だ。ある収集日、その隣人が集積所で足を止めたらしい。誰かが出したゴミ袋の中に、自分があげたのと同じような手作り品が、手つかずのまま見えていたという。

それが私の袋だったのかは分からない。きっと違う住人のものだ。それでも、自分の料理が誰かに食べられないまま捨てられていた。その事実は、その人にとってよほどショックだったのだろう。

あの日を境に、夕方のチャイムはぴたりと止まった。

道ですれ違えば、相手は今までと変わらない笑顔を向けてくれる。

「あら、お出かけ?」

「ちょっとそこまで」

ただ、もうタッパーが差し出されることはない。誰も誰かを責めることなく、あの重たいやり取りだけがするりと消えていた。

ゴミ袋の口で手をためらうことも、なくなった。玄関のチャイムに身構えなくなった夕方、私はようやく、ひとつ深く息を吐けた気がした。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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