「残り2時間で、結婚式のスピーチを書いた」当日まで頼まれたと知らなかった私。急いで対応した結果
知らなかった依頼
友人の結婚式に招かれ、私は当日、意気揚々と東京へ向かいました。
晴れの席に呼んでもらえたことが、ただ嬉しかったのです。
まさか自分がスピーチを任されているなど、そのときは想像もしていませんでした。
あとで分かったことですが、新婦は私あてに、丁寧な依頼の手紙を送ってくれていました。
ところが実家で郵便を整理していた母が、その手紙を不要な紙といっしょに処分してしまっていたのです。
おかげで私は、頼まれた事実そのものを知らないまま、のんきに会場へと近づいていました。
告げられた順番
異変に気づいたのは、式場の近くで時間をつぶしていたときでした。
共通の友人から電話が入り、開口いちばん、順番の話を切り出されたのです。
私が事情を知らないと分かると、相手のほうが慌てていました。
受話器の向こうの説明で、ようやく全体が飲み込めました。私はスピーチの担い手のひとりで、しかも出番はもう目の前に迫っている。
残された時間は、2時間ほどしかありません。
逃げ出したくなる気持ちを、ぐっと抑えました。
頭の中は真っ白で、心臓だけが早鐘のように鳴っています。
それでも、ここで投げ出せば、大切な友人の晴れ舞台に泥を塗ってしまう。断りの言葉は、とても口にはできません。もう腹をくくるよりほかにありませんでした。
マイクの前で
私は近くの喫茶店に飛び込み、手帳とペンだけを頼りに、必死で言葉をかき集めました。
「残り2時間で、結婚式のスピーチを書いた」
後になって人に話すと決まって笑われますが、あのときは笑うどころではありません。
友人と過ごした日々を思い返し、伝えたい思いを、一言ずつ書きつけていったのです。
会場には、100人ほどの招待客が集まっていました。
名前を呼ばれてマイクの前へ進むと、心臓が痛いほど鳴っていたのを覚えています。書いたばかりの一文字さえ、頭から消えかけました。
それでも、友人の幸せそうな横顔を見た瞬間、伝えたい言葉が胸によみがえりました。多少つかえても、心さえこもっていれば届く。そう信じて、私は最後まで祝いの言葉を口にしたのです。
拍手に包まれて席へ戻ったとき、どっと力が抜けました。ぶっつけ本番の大仕事を切り抜けられたことは、今でも密かな自慢になっています。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














