「ここ、私たちが先に立っていました」運動会の最前列へ突然入り込んだ保護者。何も言えず飲み込んだ私の本音
早く来て確保した最前列
子どもの保育園では、その年も園庭で運動会が開かれました。
園庭はそれほど広くなく、保護者はロープで区切られた観覧スペースから立って見ることになっています。前の列ほど子どもの姿が見やすいため、私と夫は少し早めに園へ向かいました。
到着すると、トラック沿いの最前列にはまだ空いている場所がありました。
「ここならよく見えそうだね」
「うん。早めに来てよかった」
私たちはロープのすぐ後ろに並んで立ちました。
少しずつ保護者が増え、気づけば後ろにも何列か人が並んでいます。それでも、目の前には誰もいません。これなら子どもの競技もしっかり見られそうだと安心していました。
やがて最初の競技が始まるというアナウンスがあり、園庭の空気が一気に慌ただしくなりました。
私はスマホを手にして、子どもが出てくる方向を見ていました。
そのときでした。
目の前へ入ってきた保護者
横から一人の保護者が歩いてきたかと思うと、私たちのすぐ前にあるわずかな隙間へ、すっと体を入れたのです。
ロープとの間には、人が一人立てるかどうかという程度のスペースしかありません。
私は思わず夫の顔を見ました。
夫も驚いたようにこちらを見ています。
その保護者は後ろを振り返ることもなく、スマホを構えて子どもたちのほうを見始めました。
「そこに入るんだ」
夫が小さな声でつぶやきました。
私の頭には、すぐに言葉が浮かびました。
「ここ、私たちが先に立っていました」
ほんの一言伝えればよかったのだと思います。
けれど、周囲にはたくさんの保護者がいて、これから子どもたちの競技が始まろうとしていました。そこで言い合いになることを考えると、どうしても声をかける勇気が出ませんでした。
相手もこちらを押しのけたわけではありません。ただ、わずかな隙間を見つけて当然のように前へ入っただけです。
だからこそ、余計に言いづらかったのかもしれません。
結局、私と夫は半歩ほど後ろへ下がって、そのまま競技を見ることにしました。
子どもが一生懸命走る姿を見れば自然と笑顔になります。それでも、目の前に立つその人の背中が視界に入るたび、胸の奥には小さな引っかかりが残りました。
早く来たから偉いというわけではありません。ただ、みんなが少しずつ譲り合って見ている場所だからこそ、ひと言「ここ、入ってもいいですか」と声をかけてもらえたら、感じ方はまったく違ったと思います。
言えなかった私自身にも少し後悔が残り、運動会が終わってからも「やっぱり、ひと言伝えればよかったかな」と考えてしまった出来事です。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














