「焼き魚を頼んだと思うんだけど」混雑するランチタイムに注文を間違えた私。だが、客の対応に救われた瞬間
混雑するランチタイムでの失敗
大学生の頃、私は駅近くにある小さな定食屋でアルバイトをしていました。
店内にはカウンター席とテーブル席があり、平日の昼になると、近くで働く会社員や常連のお客様でほぼ満席になります。
アルバイトを始めて一か月ほどたった頃のことです。
その日は正午を過ぎると一気に来店が重なり、入口には空席を待つお客様が二組ほど並んでいました。
私は注文を取り、料理を運び、空いた食器を下げるため、ホールと厨房の間を何度も行き来していました。
そんななか、窓側の二人掛けの席に、一人で来店した年配の男性をご案内しました。
何度か見かけたことのある常連のお客様です。
男性はメニューを見て、焼き魚定食を注文しました。私は伝票に書き込み、厨房へ注文を通したつもりでした。
十分ほどして料理ができあがり、私は男性の席へ運びました。
「お待たせしました。生姜焼き定食です」
料理をテーブルに置こうとすると、男性が少し不思議そうな顔をしました。
「あれ、焼き魚を頼んだと思うんだけど」
私は慌てて手元の伝票を確認しました。そこには、自分の字で「生姜焼き」と書かれていました。
忙しさに気を取られ、注文を聞き間違えたうえに、確認もしないまま厨房へ通してしまったのです。
「申し訳ございません。私が注文を間違えてしまいました。すぐに作り直します」
私は料理を下げ、近くにいた店長へ事情を伝えました。店長は男性にも謝罪し、厨房へ焼き魚定食を優先して作ってもらうよう頼みました。
責める代わりにかけてくれた言葉
すでに料理を待たせていたため、怒られても仕方がないと思っていました。
しかし、男性は声を荒らげることなく、私にこう言いました。
「忙しい時間だからね。次から気をつければ大丈夫だよ」
その言葉を聞き、私はもう一度頭を下げました。
「お待たせしてしまい、本当に申し訳ございません」
男性は「急がなくていいから」と言い、水を飲みながら料理を待ってくれました。
それから七、八分ほどして焼き魚定食が完成し、私は改めて男性の席へ運びました。
「大変お待たせしました。焼き魚定食です」
今度は注文内容を確認してから料理を置きました。
男性は「ありがとう」とだけ答え、そのまま食事を始めました。
食べ終えた男性は、レジで会計を済ませると、店長に何かを訴えることもなく帰っていきました。
帰り際には、私にも「ごちそうさま」と声をかけてくれました。
ミスをした事実は変わりません。
それでも、必要以上に責めず、落ち着いて待ってくれたことがありがたく感じられました。
それ以降、どれだけ店内が混んでいても、注文を受けたあとには内容を復唱し、伝票を確認してから厨房へ通すようになりました。
あのときのお客様の一言は、失敗をなかったことにするものではなく、次に同じことを繰り返さないよう気持ちを切り替えさせてくれる言葉でした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














