「電車の中で懸垂するなんて」空席だらけの車内。だが、乗客の行動に驚いた瞬間
空いた車内に、隣の車両から男性が入ってきた
八年ほど前、平日の昼間に電車へ乗っていたときのことです。
車内はかなり空いていて、乗客は私を入れて五人ほど。窓の外には田んぼや住宅が流れていて、車内には走行音だけが響いていました。
途中で、隣の車両から六十代くらいの男性が入ってきました。ジョギングにでも行くような動きやすそうな服装で、席はたくさん空いているのに座ろうとはしません。
男性は私から少し離れたところで立ち止まると、つり革の上にある金属のバーへ両手を伸ばしました。
何をするのだろうと思って見ていると、次の瞬間、男性の体がすっと持ち上がったのです。
懸垂でした。
一回、二回と、ゆっくり体を上げては下ろしていきます。あまりに突然だったので、私は思わず回数を数えていました。
十回まで終えても、男性はほとんど息を乱していませんでした。
ほかの乗客も何人かちらりと男性を見ていましたが、誰も声をかけません。
私も、安全なのだろうかとは思ったものの、突然のことで何と言えばいいのか分からず、そのまま座っていました。
終わったと思ったら、また腕を上げた
ようやく終わったと思ったところで、男性は床に降り、肩を軽く回しました。
ところが、そのまま席に座るわけではありません。
少し離れた場所へ移ると、また上のバーにつかまり、同じように懸垂を始めました。
こちらも十回ほど続けると、男性は何事もなかったように床へ降りました。
ちょうど次の駅が近づき、私は「ここで降りるのかな」と思いました。
しかし男性はホームへ向かう扉の前には立たず、車両同士をつなぐ扉を開け、そのまま次の車両へ歩いていきました。
連結部のガラス越しに見ていると、男性は向こうの車両でも立ち止まり、また両腕を上げたように見えました。
電車が駅に止まっても、男性が降りる姿はありませんでした。
私は座ったまま、「あの人は何両ぶん続けるつもりなのだろう」と考えていました。
騒いでいたわけでも、誰かに話しかけていたわけでもありません。ただ黙々と懸垂をして、終われば次の場所へ移っていく。その光景があまりにも珍しく、八年たった今でもはっきり覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














