「もう一回乗りたい」3歳の息子が待っていても譲らない女の子。見ているだけだった父親が、別の保護者の一言で動いた
父親は、うしろで見ているだけだった
休日の午前、上の子と下の子を連れて公園へ行った。
上の子は3歳、下の子は0歳。遠くの遊具まで2人を連れていくのは大変だったので、柵で囲われた3歳以下のコーナーで遊ばせることにした。
上の子は赤い車のおもちゃを気に入り、何度も柵の内側を走っていた。
私は下の子を膝に乗せながら、その様子を見ていた。
しばらくすると、年中さんくらいに見える女の子が父親と入ってきた。女の子は赤い車を見るなり、まっすぐ近づいてきた。
「ねえ、それ貸して」
上の子は少し名残惜しそうにしたものの、素直に車から降りた。
「ありがとう」
女の子はそう言って乗り込み、一周するといったん降りた。
ところが、上の子がまた乗ろうとすると、すぐに戻ってきた。
「もう一回乗りたい」
上の子は困ったように私の顔を見た。父親は少し離れた柵ぎわに立ったまま、こちらを見ていた。
私は女の子に声をかけた。
「もう一回乗りたいんだね。でも、この子も待ってるから、次は交代してくれる?」
「うん」
女の子は素直にうなずいた。意地悪をしているようには見えなかった。
ただ、父親が少し離れたところにいたため、いつの間にか私が女の子にも声をかける形になっていた。
別の保護者が、短く声をかけた
その様子を見ていたのか、近くのベンチにいた別の保護者がこちらへ来た。
女の子のそばまで行くと、やわらかい声で言った。
「ここ、小さい子が遊ぶところみたいだよ」
女の子はきょとんとして、柵の外を見た。
「そうなの?」
「うん。あっちにも大きい子向けの遊具があるよ。楽しそうだよ」
「ほんと?」
女の子は車から降り、少し離れた遊具のほうへ目を向けた。
その隙に、上の子が赤い車へ戻った。
ハンドルを握ると、ほっとしたような顔をしている。
すると、柵ぎわにいた父親がこちらへ歩いてきて、女の子に声をかけた。
「ほら、あっち行ってみようか」
女の子は父親の手を握ったものの、すぐにこちらを振り返った。そして上の子を指さした。
「この子も一緒に行こうよ」
私は少し笑って、首を横に振った。
「ありがとう。でも、この子はここで遊ぶから。パパと2人で行っておいで」
女の子はまだ諦めきれないようで、「一緒がいい」と上の子のそばへ戻ろうとした。
私はもう一度、今度は少しゆっくり伝えた。
「一緒に遊びたいんだね。でも今日は、パパと2人で行っておいで」
「……わかった」
女の子は少し口をとがらせたものの、父親に手を引かれて歩きだした。
出口で、父親がふとこちらを振り返った。
私に何か言うことはなかった。ただ、小さく頭を下げて、そのまま女の子と柵の外へ出ていった。
声のない会釈だったけれど、私はそれを見て少しだけ肩の力が抜けた。
柵の内側では、上の子がまた赤い車を走らせていた。私の前を通り過ぎるとき、うれしそうに聞いてきた。
「これ、まだ乗ってていい?」
「いいよ。いっぱい乗っておいで」
そう答えると、上の子は満足そうにハンドルを握り直した。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














