tend Editorial Team

2026.09.16(Wed)

「パパと2人で行っておいで、と2度伝えた」帰り際に何も言わずに去っていった、あの日の父親の顔

「もう一回乗りたい」3歳の息子が待っていても譲らない女の子。見ているだけだった父親が、別の保護者の一言で動いた

父親は、うしろで見ているだけだった

休日の午前、上の子と下の子を連れて公園へ行った。

上の子は3歳、下の子は0歳。遠くの遊具まで2人を連れていくのは大変だったので、柵で囲われた3歳以下のコーナーで遊ばせることにした。

上の子は赤い車のおもちゃを気に入り、何度も柵の内側を走っていた。

私は下の子を膝に乗せながら、その様子を見ていた。

しばらくすると、年中さんくらいに見える女の子が父親と入ってきた。女の子は赤い車を見るなり、まっすぐ近づいてきた。

「ねえ、それ貸して」

上の子は少し名残惜しそうにしたものの、素直に車から降りた。

「ありがとう」

女の子はそう言って乗り込み、一周するといったん降りた。

ところが、上の子がまた乗ろうとすると、すぐに戻ってきた。

「もう一回乗りたい」

上の子は困ったように私の顔を見た。父親は少し離れた柵ぎわに立ったまま、こちらを見ていた。

私は女の子に声をかけた。

「もう一回乗りたいんだね。でも、この子も待ってるから、次は交代してくれる?」

「うん」

女の子は素直にうなずいた。意地悪をしているようには見えなかった。

ただ、父親が少し離れたところにいたため、いつの間にか私が女の子にも声をかける形になっていた。

別の保護者が、短く声をかけた

その様子を見ていたのか、近くのベンチにいた別の保護者がこちらへ来た。

女の子のそばまで行くと、やわらかい声で言った。

「ここ、小さい子が遊ぶところみたいだよ」

女の子はきょとんとして、柵の外を見た。

「そうなの?」

「うん。あっちにも大きい子向けの遊具があるよ。楽しそうだよ」

「ほんと?」

女の子は車から降り、少し離れた遊具のほうへ目を向けた。

その隙に、上の子が赤い車へ戻った。

ハンドルを握ると、ほっとしたような顔をしている。

すると、柵ぎわにいた父親がこちらへ歩いてきて、女の子に声をかけた。

「ほら、あっち行ってみようか」

女の子は父親の手を握ったものの、すぐにこちらを振り返った。そして上の子を指さした。

「この子も一緒に行こうよ」

私は少し笑って、首を横に振った。

「ありがとう。でも、この子はここで遊ぶから。パパと2人で行っておいで」

女の子はまだ諦めきれないようで、「一緒がいい」と上の子のそばへ戻ろうとした。

私はもう一度、今度は少しゆっくり伝えた。

「一緒に遊びたいんだね。でも今日は、パパと2人で行っておいで」

「……わかった」

女の子は少し口をとがらせたものの、父親に手を引かれて歩きだした。

出口で、父親がふとこちらを振り返った。

私に何か言うことはなかった。ただ、小さく頭を下げて、そのまま女の子と柵の外へ出ていった。

声のない会釈だったけれど、私はそれを見て少しだけ肩の力が抜けた。

柵の内側では、上の子がまた赤い車を走らせていた。私の前を通り過ぎるとき、うれしそうに聞いてきた。

「これ、まだ乗ってていい?」

「いいよ。いっぱい乗っておいで」

そう答えると、上の子は満足そうにハンドルを握り直した。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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