「さっき、怖かったよね。大丈夫?」夕方のレジで声を荒らげた男性客。だが、先輩の対応に救われた瞬間
売場へ向かおうとした私を止めた声
20代のころ、地元のスーパーでレジのアルバイトをしていました。
平日の夕方は仕事帰りの人たちで混み合い、その日もどのレジにも列ができていました。
50代くらいの男性客の商品を読み取り、合計金額を伝えたときです。男性が画面を見て、急に表情を険しくしました。
「ちょっと待って。これ、特売だっただろ。値段違わない?」
私は商品と画面を見比べましたが、表示されているのは通常の価格です。
「申し訳ありません。売場の表示を確認してまいりますので、少々お待ちいただけますか」
そう言ってレジを離れようとすると、男性が声を荒らげました。
「は?客を待たせる気か」
「すぐに確認しますので……」
「だから、客を待たせる気かって言ってるんだよ!」
二度目は店内に響くほどの大声でした。男性がレジ台を強く叩き、後ろに並んでいた人たちも驚いたようにこちらを見ます。
「もういいから、責任者呼んでよ」
列が伸びていくのが目に入り、私は焦るばかりでした。
売場で確認すると、特売だったのは別の商品
騒ぎに気づいた先輩が、品出しの手を止めて来てくれました。
「大丈夫。私が確認するね」
先輩はそう言うと、男性に向き直りました。
「お待たせしてすみません。こちらの商品ですね。売場を一緒に確認してもよろしいですか?」
男性は「ちゃんと見てよ」と言いながら、先輩と売場へ向かいました。対象の商品も先輩が持っていきました。
私はレジに残り、二人が戻ってくるのを待ちました。
しばらくして戻ってきた先輩が、男性の前で説明しました。
「確認しました。特売になっていたのは、隣に並んでいたこちらとは別の商品でした」
「でも、すぐ横に特売って出てたじゃないか」
「はい。場所が近いので分かりにくかったかもしれません。ただ、ポップには特売になる商品の名前が書かれていました」
先輩は責めるような言い方をせず、売場で確認した内容だけを伝えました。
男性はしばらく黙っていましたが、やがて「……もういい」と短く言いました。
「今日は買わないから」
そう言って会計をやめ、そのまま店を出ていきました。
先輩は列のお客さんに「お待たせして申し訳ありません」と頭を下げました。
すると先頭にいた女性が、私に小さく声をかけてくれました。
「大変でしたね。急がなくて大丈夫ですよ」
その一言で、張りつめていた気持ちが少しほどけました。
「確認しないわけにはいかないから」
仕事を終え、帰り道で先輩と一緒になりました。
「さっき、怖かったよね。大丈夫?」
「はい…。大きな声で同じことを二回言われたときは、どうしようって。後ろも並んでたから、早くしなきゃって焦りました」
先輩はうなずきました。
「ああいうときほど焦るよね。でも、値段のことは確認しないわけにはいかないから」
「みんな待ってると思ったら、余計に焦っちゃって」
「うん。でも確認しないまま会計するほうが困るでしょ。ちゃんと確認しようとしたんだから、それで大丈夫だよ」
その言葉を聞いて、ようやく肩の力が抜けました。
大きな声で急かされると、自分が悪いことをしているような気持ちになることがあります。それでも、必要な確認まで省いてはいけないのだと、あの日の出来事で学びました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














