「ごめんなさいね。これ2つだけなの」低姿勢なのに列を抜かした女性。だが、列の先頭から聞こえた一言とは
列の横からレジへ来た女性
土曜の昼前、私はドラッグストアのレジに並んでいました。かごに入れていたのは、切らしていた胃薬とばんそうこうだけです。
開いているレジは一台で、私の前には四人が並んでいました。先頭から二番目には、大きな買い物かごを提げた五十代くらいの男性が立っていました。
先頭の客の会計が終わり、その男性の番になったときです。
棚のほうから高齢の女性が歩いてきました。
女性は列の横を通ってレジの前まで来ると、手に持っていた二つの箱を店員さんに見せました。
「ごめんなさいね。これ2つだけなの。先に会計してもらえない?」
若い男性店員さんは一瞬戸惑ったように列を見てから、女性へ向き直りました。
「申し訳ありません。皆さま順番にお待ちいただいているので、最後尾からお願いできますか」
女性は少し困ったような顔をしました。
「でも、急いでるのよ。2つだけだし、すぐ終わるでしょう?」
「すみません。商品の数にかかわらず、順番にお願いしているんです」
そう言われても、女性はその場を動きませんでした。
「そこを何とかしてよ。本当にこれだけなのよ」
先に会計してほしいという頼みは、これで3度目です。
店員さんは声を荒らげることなく、レジ横の案内を示しました。
「お急ぎのところ申し訳ありません。ただ、ほかのお客様にもお待ちいただいていますので……最後尾からお願いします」
列の先頭にいた男性がかけた一言
レジの横には、「お会計は、お並びの順にご案内しております」と書かれた小さな張り紙がありました。
女性は張り紙に目を向けましたが、それでもまだレジの前に立ったままです。
会計も止まり、後ろで待っている私まで少し気まずくなってきました。
すると、次に会計するはずだった男性が、持っていたかごを足元に置いて女性へ声をかけました。
「あの、みんなあそこから並んでるんですよ」
責めるような言い方ではありません。
男性は入口側にある最後尾の案内を指しながら、もう一言だけ続けました。
「急いでるのは分かりますけど、こっちも順番を待ってるので……」
女性は男性を見たあと、後ろに続いている列へ目を向けました。
しばらく黙っていましたが、やがて小さく息を吐きました。
「……分かったわ。後ろに並ぶわよ」
そう言って二つの箱を抱え直し、列の最後尾へ歩いていきました。
店員さんは「お待たせしました」と男性に頭を下げ、止まっていた会計を再開しました。
男性もそれ以上何か言うことはなく、列はまた静かに進み始めました。
女性がどれほど急いでいたのか、その事情までは分かりません。ただ、その場ではほかの人たちも同じように順番を待っていました。
強い言葉で責めるのではなく、「みんな並んでいる」と静かに伝えた男性の一言が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














