「えっ、これっていいのか?」イチゴ2パックを開けて大粒だけを詰め替える客。だが、青果売り場の店員が静かに伝えた正論
母に頼まれたケーキ用のイチゴ
日曜の昼すぎ、出かけようとした僕に、母が台所から声をかけてきた。
翌日は姉の誕生日で、手作りのケーキにイチゴをのせるという。
「帰りにイチゴを買ってきて。できれば形のきれいなのを選んでね」
「わかった。1パックでいいんだよね」
夕方、帰り道のスーパーに寄った。入口近くの青果売り場へ向かい、イチゴが並ぶ平台の前まで来たところで、思わず足が止まった。
40代くらいの女性客が、2つのイチゴのパックを開けていたからだ。
片方から大きくて形のそろった粒を取り、もう片方へ移している。どうやら、中身を入れ替えながら自分の好みの1パックを作っているようだった。
(えっ、これっていいのか…?)
女性客は周囲を気にする様子もなく、さらに別のパックへ手を伸ばしかけた。
品出しに来た店員さんが足を止めた
そのとき、段ボールを抱えた50代くらいの男性店員が、倉庫の扉から平台の前へやってきた。
店員さんは女性客の手元を見ると、段ボールを足もとに置いた。
「お客様、申し訳ありません。パックの中身の入れ替えはご遠慮いただいております」
女性客は手を止めたものの、すぐに答えた。
「ちょっと見てただけです。ちゃんと買いますから」
店員さんは声を荒らげることなく、もう一度伝えた。
「ありがとうございます。ただ、お選びになる際はパックごとでお願いいたします」
近くでトマトを選んでいた年配の男性も、一度だけこちらへ目を向けた。
女性客はしばらく黙っていたが、やがて手にしていたパックを平台へ戻した。
店員さんはそこで、開けられていた2パックをまとめて手に取った。
「こちらは売り場から下げますね」
女性客は何も言わず、今度は未開封のパックを1つかごに入れると、その場を離れていった。
売り場から下げられた2つのパック
店員さんは開けられた2パックを段ボールの上に置き、崩れていた売り場を静かに並べ直していった。
僕も並んでいる中から、粒の大きさがそろった1パックを選んだ。
家に帰ると、母が台所でスポンジケーキを冷ましていた。
「おかえり。イチゴ、あった?」
「あったよ。でも売り場で、中身を詰め替えてる人がいてさ」
「えっ、パックを開けて?」
「うん。店員さんが気づいて、ちゃんと止めてた」
僕が見たことを話すと、母は驚いた顔でイチゴのパックを受け取った。
「それはびっくりするね。店員さんが気づいてくれてよかったね」
そう言いながら、母はフタ越しにイチゴを眺めた。翌日のケーキには、僕が選んだその1パックを使うことになった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














