「窓に当たる枝を何とかしてほしい」住む人のいなくなった隣家。相続した男性へ手紙を送った2週間後
夜になると窓をこする2本の枝
一人暮らしだった隣のおばあさんが亡くなってから、その家は空き家になった。家族らしい人が訪ねてくるところを、僕は一度も見たことがなかった。
しばらくすると庭の木が伸び、枝がフェンスを越えて、うちの2階まで届くようになった。雨どいには落ち葉がたまり、雨の日には水があふれることもあった。
特に困ったのが寝室の窓だった。2本の枝がガラスに当たり、風が吹くたびにカサカサと音がする。夜中に目を覚ますこともあった。
市役所には2度相談した。しかし、所有者の個人情報をこちらへ教えることはできず、市がすぐに民有地の木を切ることもできないという説明だった。
その夜、窓の外で揺れる枝を見ながら、妻が言った。
「これ、ずっとこのままなのかな」
「持ち主と話ができればいいんだけどな」
「持ち主って、自分で調べられないの?」
その一言で、僕は不動産の登記のことを思い出した。
相続した人へ送った一通の手紙
確認してみると、登記上は相続によって名義が変わっており、現在の所有者の名前と住所が分かった。
僕は枝と雨どいの写真を添え、「越境している枝を剪定していただけないでしょうか」と手紙を書いた。責めるような言葉は入れなかった。
それから2週間ほどたったころ、電話がかかってきた。名乗った男性は、隣家を相続した人だった。
「お手紙と写真、見ました。あんな状態になっているとは知らなくて…。ご迷惑をおかけしました」
「いえ、ご連絡いただけてよかったです」
「来月、業者に入ってもらいます。お宅のほうへ伸びている枝も、きちんと切ってもらいます」
枝がなくなった窓を、久しぶりに開けた
翌月の土曜日、隣家の前に業者のトラックが止まった。電話をくれた男性も来ていて、僕の姿を見ると頭を下げた。
業者さんは枝の状態を確認すると、「お隣側へ出ている枝と、雨どいの落ち葉も見てほしいと伺っています」と説明した。
作業が始まり、窓に当たっていた2本の枝も切られていった。雨どいにたまっていた落ち葉も取り除かれ、長く覆われていた場所に光が入った。
作業が終わると、男性はもう一度こちらへ頭を下げた。
「これからは、年に一度は様子を見に来るようにします」
その夜、僕は久しぶりに寝室の窓を開けた。風が入ってきても、もうガラスをこする音はしない。
隣に来た妻も、静かになった窓辺でほっとしたように笑っていた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














