「具もたっぷり入れたからな!」キャンプで味噌汁を作った友人。だが、鍋のふたを開けた4人が思わず笑った出来事
料理上手の友人が引き受けた味噌汁
40年以上前、私が大学生だったころの話です。
仲のいい友人3人と男ばかり4人で、山へキャンプに出かけました。
テントと食材を分けて背負い、キャンプ場に着いたのは日が沈むころでした。
たき火のそばに小さなコンロを置き、鍋に水を張ると、友人の1人が手を挙げました。
「味噌汁は俺がやる、お前らは座って待ってろ」
「おう、頼んだ。もう腹ぺこだよ」
「任せとけって。味噌汁なんか失敗しないさ」
彼は下宿で毎晩自炊していて、4人のなかではいちばん料理が得意でした。
私たちも安心して、味噌汁は彼に任せました。
私はたき火で肉を焼きながら、ときどきコンロのほうを見ていました。友人は味噌を溶くと、荷物から取り出した袋を鍋の上で逆さにしました。
さらさらと乾いた音がして、あっという間に袋は空に。何を入れたのかまでは気に留めませんでした。
「具もたっぷり入れたからな!」
その得意げな声を聞き、私も温かい味噌汁が楽しみになりました。
ふたを開けると、汁が見当たらない
しばらくして、4人はカップを持って鍋を囲みました。友人がおたまを握ってふたを開けると、湯気の向こうに思いがけないものが見えました。
鍋の中は、ふっくらとふくらんだ刻み高野豆腐でぎっしり。
肝心の汁が、どこにも見当たりません。
さっきの袋は高野豆腐だったのです。
友人は乾いた高野豆腐を一袋まるごと入れてしまい、鍋の水分を全部吸わせていたのでした。
「……あれ?これ、味噌汁だよな?」
私がそう言うと、みんな一斉に吹き出しました。
おたまを持った友人も、照れくさそうに頭をかいて笑っています。
ところが、少しして真顔に戻ると、こう言い張ったのです。
「いや、わざとだよ。汁がなければ、カップが汚れないだろ?」
「そんなわけあるか!」
ほかの3人の声が重なりました。それでも友人は「最初からそのつもりだった」と譲りません。
結局、私たちは高野豆腐をカップに取り分け、吸い込まれた味噌汁をちゅうちゅう吸って食べました。
口にすると、味はちゃんと味噌汁です。星空の下、ひと口吸っては笑い、また吸っては笑い、とうとう鍋を空にしました。
「なんだ、汁はちゃんとあったじゃないか」
「だから言っただろ。全部この中に入れておいたんだよ」
その夜から、友人のあだ名は「高野豆腐」になりました。
今でも4人で集まって鍋を囲むと、彼は真っ先におたまを握ります。あの夜の味噌汁を思い出すたび、私たちはまた笑ってしまうのです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














