「電車なんて、すぐ来ますし」山あいの町で帰りの時刻表を見なかった私。タクシー運転手が慌てて告げた一言
朝の電車がすぐ来たせいで
大学院生のころ、研究の資料を見せてもらうために、山あいの町にある小さな博物館へ出かけました。
新幹線が停まる大きな駅でローカル線に乗り換え、数駅先で降りてからタクシーで20分あまり。
都会育ちの私には、ちょっとした遠出でした。
ところが朝、乗り換えのホームに着くと、ちょうど電車が入ってきたのです。
時刻も調べずに来たのに、待ち時間はゼロ。
「なんだ、すぐ来るんだ」
すっかり安心した私は、帰りの電車の時刻を確認することもしませんでした。
博物館での資料の閲覧は、夕方までかかりました。
帰りも博物館の近くでタクシーをつかまえ、後部座席に乗り込みます。
運転手さんにローカル線の駅名を伝えたあと、私は何気なく言いました。
「そんなに急がなくて大丈夫です。電車なんて、すぐ来ますし」
「えっ、そうですか。…ちなみに、駅からはどちらへ?」
60代くらいの運転手さんが、バックミラー越しに尋ねてきました。
「新幹線に乗り換えて、今日中に帰ります」
そう答えた瞬間、運転手さんの表情が変わったのです。
運転手さんが慌てた理由
「えっ!次の電車まで、あと15分しかないですよ!逃したら次は2時間待ちです!」
「えっ、2時間ですか!?」
思わず聞き返すと、運転手さんはうなずき、すぐに車を走らせました。
「この時間は特に本数が少ないんですよ。なんとか間に合うといいんですが」
行きは20分以上かかったはずです。発車まで15分しかないのに、本当に間に合うのでしょうか。
急に不安になった私は、窓の上の取っ手をぎゅっと握りました。
運転手さんは大通りを避け、田んぼの間を通る細い道へ。
スピードを出しすぎることもなく、迷いのない運転で駅を目指します。
私は窓の外を眺めながら、朝のことを思い出していました。
ホームに着いたとたんに入ってきた、あの電車です。
駅に着いたのは、発車のほんの少し前でした。
運転手さんはほっとした表情で、こちらを振り返りました。
「よかった、間に合った!さあ、行って!お気をつけて!」
「本当にありがとうございます!」
何度も頭を下げ、急いでホームへ向かいました。
そこで壁の時刻表を見上げると、思わず目を疑いました。
夕方の電車は、本当に2時間おき。朝の時間帯も、本数は決して多くありません。
今朝、待ち時間ゼロで電車に乗れたのは、ただ運がよかっただけだったのです。
無事に電車へ乗り込み、ようやく息をついた私は、自分の言葉を思い出しました。
「電車なんて、すぐ来ますし」
あんなに自信満々に言っていた自分がおかしくて、思わず小さく笑ってしまいました。
おかげで帰りの新幹線にも、余裕をもって乗ることができました。
それ以来、遠出をするときは、行きの電車の中で必ず帰りの時刻表を確認するようにしています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














