「見せに来ただけだし」運動会で役員の仕事を断り、妻と赤ちゃんを見せて回った副会長。だが、閉会後に会長が告げたこと
運動会で赤ちゃんを見せて回る副会長
子どもが通う小学校の運動会は、よく晴れた日でした。
保護者席のテントの横では、PTA役員たちが道具を運んだり、観客を誘導したりと忙しそうに動いています。
毎年その姿を見るたびに、私は頭が下がる思いでした。
ところがその年、役員の名札をつけた副会長の男性は、生まれて間もない赤ちゃんを抱き、奥さんと一緒に保護者席を回っていました。
「ほら、見てください。目元、そっくりでしょう?」
「わあ、本当!かわいいですね!」
声をかけられるたびに、夫婦はうれしそうに笑っています。
競技の開始を知らせる合図が鳴っても、二人は別の保護者のところへ向かっていきました。
この学校では、毎年副会長が役員の動きを取りまとめることになっています。
しかし、副会長は一向に仕事に戻る様子がありません。
役員をしている友人も、汗をぬぐいながら準備に追われていました。
そして、とうとう夫婦のところへ声をかけに行ったのです。
「すみません、次の競技の準備なんですけど、指示をお願いできますか?」
すると副会長は、面倒そうに片手を振りました。
「いや、今日は無理だって。赤ちゃん連れなんだから」
隣にいた奥さんも、笑いながら言いました。
「見せに来ただけだし」
「そうそう。ほかにも役員さん、たくさんいるでしょ。何とかなるよ」
少し離れた場所にいた私にも、そのやり取りは聞こえてきました。
友人は困った顔で戻ってくると、「結局、私たちで全部やらなきゃいけないんだね…」と、疲れた様子でこぼしました。
閉会後、役員全員の前で告げられた言葉
閉会式が終わると、校庭の本部テントの前に役員全員が集まりました。
副会長夫婦も、赤ちゃんを抱いたまま輪の端に立っています。
私は子どもを待ちながら、少し離れたところからその様子を見ていました。
すると、PTA会長の女性が副会長に声をかけました。
「副会長、片付けの取りまとめをお願いします。テントとロープの回収、それから係ごとの確認もお願いできますか?」
副会長は驚いたように顔を上げました。
「えっ、いや、でも……赤ちゃんがいるんですけど」
会長は落ち着いた声で答えました。
「赤ちゃんは奥さんと本部テントの日陰にいてもらって大丈夫ですよ。必要なら、私たちも交代で見ますから」
そして、副会長の顔を見て続けました。
「片付けの取りまとめは、毎年副会長のお仕事ですので。お願いしますね」
周りの役員たちも、会長の言葉にうなずいていました。
奥さんは何か言いかけましたが、そのまま口を閉じ、視線を落としました。副会長も、先ほどまでの笑顔が消えています。
しばらく黙っていた副会長は、赤ちゃんを奥さんの腕に預け、役員たちの前に出ました。
「じゃ、じゃあ……ロープの係から、お願いします」
少し上ずった声でしたが、ようやく片付けの指示が始まりました。
役員たちがそれぞれの持ち場へ向かうなか、友人が私のほうを振り返りました。
そして、胸の前で小さくガッツポーズをしたのです。
赤ちゃんをみんなに見せたい気持ちは分かります。
ただ、引き受けた役割まで周りに任せきりにするのは違うのではないか。
友人のほっとした顔を見ながら、そんなことを思った運動会でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














