「ネットならもっと安く売ってるぞ」レジで値引きを迫った客。だが、後ろに並ぶ父親の一言で黙ったワケ
電源タップひとつで、レジの行列が止まった
5年ほど前、私は家電量販店でレジのアルバイトをしていました。
その日は週末の夕方。会計を待つお客さまは10人以上いて、レジの前には長い列ができていました。
そんな中、50代くらいの男性客が、小さな電源タップの箱をレジ台に置きました。
私が商品を読み取ろうとすると、男性は手でさえぎり、不満そうに言いました。
「この値段はなんだ。ネットならもっと安く売ってるぞ」
突然のことで戸惑いましたが、私は落ち着いて答えました。
「申し訳ありません。こちらの店舗では、表示している価格でお願いしています」
「だから、ネットと同じにしろって言ってるんだよ!」
ネットの価格には合わせられないことをもう一度説明すると、男性はレジ台に身を乗り出しました。
「客を見下してるのか!上の者を出せ!」
私は急いで店長を呼びました。
ところが、男性の怒りは収まりません。
私をにらみつけ、指を突きつけてきたのです。
「お前じゃ話にならない、名前を教えろ」
「えっ……名前、ですか?」
どうして名前まで聞かれるのだろう。怖くなり、思わず言葉に詰まりました。
そこへ店長が来て、私の隣に立ちました。
店長は頭を下げ、店舗とネットでは価格を別に設定していることを説明しました。
しかし、男性は納得しません。
「だったら、ここで下げればいいだろう!」
男性の声が響く中、列はレジの前から通路まで伸びていました。後ろでは時計を見る人や、ため息をつく人もいます。
私も申し訳なくて、何度も頭を下げるしかありませんでした。
家族連れの父親がかけた一言
そのときでした。
列の前方に並んでいた家族連れの父親が、男性に声をかけたのです。
30代くらいの夫婦と、小さな子どもの3人家族でした。
父親は声を荒らげることなく、はっきりと言いました。
「ネットのほうが安いなら、ネットで買えばいいんじゃないですか。うしろで、みんな待ってますよ」
男性は驚いたように振り返りました。
並んでいたお客さまたちもうなずき、男性に視線が集まります。少なくとも、その場で男性の言い分に賛成する声は聞こえませんでした。
「いや、それは…」
男性は何か言い返そうとしましたが、途中で口を閉じました。
そして、レジ台に置いた電源タップの箱をそのままにして、足早に出口へ向かっていったのです。
あれほど大きな声を出していた男性が何も買わずに立ち去り、私はしばらくその背中を見ていました。
すると、父親のそばにいた子どもが顔を上げました。
「パパ、かっこいい」
その言葉に、張り詰めていた気持ちが少しだけ和らぎました。
私は家族連れに頭を下げ、レジ台に残された箱を脇へよけました。
そして、次のお客さまに向き直ります。
「大変お待たせいたしました」
ようやく行列が動き始めました。
店長が対応しても収まらなかった騒ぎが、順番を待っていた父親の一言で終わったことに、私は驚くばかりでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














