「車の前に、ひとりで立ってたから」小児科で姿を消した2歳の息子。だが、見つけてくれた見知らぬ女性の説明に血の気が引いた
テレビに夢中だった2歳の息子
子どもたちが小さかったころ、2歳の息子と1歳の下の子を連れて、小児科へ行った日のことです。
待合室は診察を待つ親子で混み合い、長いすもほとんど埋まっていました。
息子は壁にかかったテレビの前の長いすに座り、画面に夢中になっていました。
もともとテレビを見始めると、呼びかけてもなかなか返事をしない子でした。
しばらくすると、抱っこしていた下の子が泣き始めました。おむつを替えなければなりません。
おむつ替えの部屋は、待合室を抜けた廊下の奥にあります。
「ちょっとおむつ替えてくるね。ここで待っててね」
息子に声をかけると、テレビを見つめたまま、こくこくとうなずきました。
その様子に、私は待っていられると思ってしまったのです。
戻ってきた私を待っていた、空っぽの長いす
下の子のおむつを替え終え、待合室へ戻りました。
ところが、息子が座っていた長いすには誰もいません。
「あれ……?どこ行ったの?」
慌てて辺りを見回しましたが、息子の姿はありません。トイレの中も診察室の前も探しましたが、見つかりませんでした。
一気に血の気が引き、私は下の子を抱いたまま受付へ駆け寄りました。
「すみません!テレビの前にいた男の子、見ませんでしたか?2歳の子なんですけど…」
「さっきまで座っていましたよね。すぐ探します!」
看護師さんたちも顔色を変え、待合室や廊下を探してくれました。
そのとき、ふと入口の自動ドアが目に入りました。
小さな子どもが前に立つだけでも開いてしまうドアです。その向こうには、車がひっきりなしに出入りする駐車場があります。
まさか、外に出てしまったのでは…。
そう考えた瞬間、足が震えました。
「駐車場で泣いてたのよ」見知らぬ女性が連れてきたのは
そのときです。
自動ドアの向こうから、聞き覚えのある泣き声がしました。
「えっ…!」
ドアが開くと、見知らぬお母さんが、泣きじゃくる息子の手を引いて入ってきたのです。
「この子のお母さんですか?」
「はい!私です!うちの子です!」
思わず駆け寄ると、そのお母さんはほっとしたような表情で言いました。
「駐車場で泣いてたのよ」
そして、息子の背中をさすりながら続けました。
「車の前に、ひとりで立ってたから。びっくりしちゃった」
その言葉を聞いて、胸がぎゅっと締めつけられました。
私は下の子を片腕で抱えたまま、もう片方の腕で息子を強く引き寄せました。
息子は私の服をぎゅっとつかみ、声をあげて泣いています。つられるように、下の子までぐずり始めました。
「ありがとうございます……!本当に、ありがとうございます!」
何度お礼を言っても、足りない気持ちでした。
「ううん。見つかってよかった」
そのお母さんは優しく笑い、軽く手を振ると、自動ドアの向こうへ出ていきました。
家に帰り、子どもたちを寝かしつけたあとも、私はなかなか落ち着けませんでした。
「車の前に、ひとりで立ってたから」
あの言葉が、何度も頭の中によみがえります。
もし車が動いていたら。もし、あの女性が通りかからなかったら……。
息子はまだ2歳でした。テレビに夢中だから大丈夫だろうと、ひとりにしてしまった自分の判断が怖くなりました。
隣で眠る息子の顔を見つめながら、無事に戻ってきてくれたことへの安堵と、あとから押し寄せる恐怖で、胸がいっぱいになりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














