「破いた図鑑、6千円で弁償して」身に覚えのない本の代金を、子ども会の迎えで私に迫るママ友。私の問いに折れた
工作の迎えを待つ公民館のロビー
ママ友は、破いた図鑑を6千円で弁償してと言いました
「破いた図鑑、6千円で弁償して。」
子ども会の夏休みの工作が終わるのを待つ、公民館のロビーでした。娘と同じクラスの子の母親が、私の前に立ちふさがりました。人の物を借りては、返すのがいつも遅い人です。
青い表紙の大きな図鑑を、こちらへ向けて胸の前に抱えています。
「先週、うちで貸したでしょ。」
図書館で借りて、6千円と言われたとママ友は言いました
ママ友は、図鑑を抱え直しました。
「私が、図書館で2週間借りたの。」
「カウンターで、6千円だって。」
駅の向こうの図書館で、2週間の約束で借りた本だ、と言うのです。
昨日、玄関の前に袋に入れて返してあり、開けたら表紙の付け根が破れていた。
弁償の額はカウンターで聞いた。
返却期限は来週だから、今日のうちに払ってと。
借りていないと示せる物を、私は何も持っていません
借りていないと答えても、ママ友は『受け取ったじゃない』と言うばかりです。
「返ってきたまま、だれも触ってない。」
奥のベンチに座っていた別の母親が、『借りた物は、大事にしないと』と私を見ます。
先週、娘を迎えにママ友の家へ寄ったのは本当です。しかし、図鑑を借りた覚えはありません。その場で貸し借りがなかったことを示せる物も、持っていませんでした。
ベンチに座っている母親は、ママ友と幼稚園からの付き合いで、子ども会の係も一緒です。迎えの母親たちの話は、いつもこの2人から回ってきます。
ママ友が図鑑を横に倒し、破れた所を私の前へ突き出しました。
「ほら、ここが破れてる。」
「返ってきたまま、だれも触ってない」
その図書館では、背に赤い丸のある本を館外へ貸し出していません
突き出された図鑑の背が、初めてこちらを向きました。私は図鑑に触れないまま、尋ねました。
「赤い丸の意味、ご存じですか。」
破れた表紙の付け根から少し離れた背の下の方に、赤い丸いシールが貼ってありました。
私も何度か利用したことのある図書館です。その図書館では、赤い丸は館内閲覧専用の本を示す印でした。
調べ物の棚にも、赤い丸の本は館外へ持ち出せないという案内が掲示されています。
つまり、この図鑑は通常の貸出手続きでは借りられない本です。
ママ友が言う、2週間の約束で借りたという説明とは合いません。
私は、図書館へ確認すれば分かるはずだと考えました。背はそれまで、ママ友の腕の陰に隠れていたのです。
赤い丸はどれにも貼ってあると、ママ友は言い返しました
ママ友が、図鑑を体の向こうへ回しました。
「赤い丸なんて、どれにも貼ってる!」
「貸し出す本には、貼りません。」
ベンチに座っていた母親は、膝の日傘を脇へ立てかけました。
そして、ママ友の抱える図鑑をじっと見つめます。先ほどまで私に向けられていた疑いの目が、今度はママ友へ向いていました。
ママ友は何か言い返そうとしましたが、言葉が出てきません。図鑑を抱える腕にも、力がなくなっていきました。
破いたのは自分の子だと認め、ママ友は図書館へ電話しました
しばらく黙り込んだ後、ママ友は観念したように口を開きました。
『閉館まぎわに、うちの子がかばんに入れて帰ってきたの。破いたのも、うちの子』と、ママ友は図鑑を下ろしました。
貸出手続きをしたという話も、私が借りて破いたという話も、嘘だったのです。
それから図鑑を体の脇に寄せ、自分のスマホで図書館へ電話をかけました。
「調べ物の図鑑を、持ち帰りました。」
図鑑は、ママ友が自分で図書館へ持っていき、事情を説明することになりました。破損について弁償が必要かどうかは、図書館が状態を確認して判断することになります。
私に請求していた6千円の話は、そこで立ち消えになりました。
ママ友は床に目を落としたまま、電話の向こうへ『すみません』を繰り返していました。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














