「ちょっとくらい、協力してくれてもねえ」駐車場の下に下水管を通す頼みを断った私。後日、工務店の担当者が返した言葉
隣の家から持ちかけられたお願い
隣の空き地に、新しく家が建つことになりました。
隣の土地はうちより少し高い位置にあり、道路との間にも段差があります。
ある日の昼、その家の施主が工務店の担当者と一緒に、うちの玄関先へやってきました。
「実は、下水管のことでご相談がありまして」
担当者によると、前の道路側の下水道につなぐには、管の高さや勾配の関係でポンプが必要になるそうです。
一方、裏の道路側ならポンプを使わずに排水できるものの、そのためには、うちの駐車場の下に管を通す必要があるとのことでした。
「駐車場の下を通させてもらえませんか」
施主はそう言って、私の返事を待っていました。
ポンプを設置せずに済めば、工事の費用をかなり抑えられるそうです。
ただ、いくら地面の下とはいえ、他人の家の下水管を自分の敷地に通すことになります。
「家族とも相談したいので、少し考えさせてください」
その場では返事をせず、妻と息子に話しました。
妻は「よその家の下水がうちの駐車場の下を流れるのは、ちょっと嫌だわ」と難色を示しました。
息子も「あとから何かあったら、面倒なことにならない?」と心配しています。
私も同じ気持ちでした。
数日後、私は施主に返事をしました。
「申し訳ありません。家族とも話したんですが、今回はお断りさせてください」
「ああ、そうですか。でも、地面の下ですから、普段は見えないんですけどね」
「それは分かるんですが、やっぱり後々のことが心配で…」
「……分かりました」
施主は不満そうな表情のまま、門を出ていきました。
そして帰り際、私にも聞こえる声でこう言ったのです。
「ちょっとくらい、協力してくれてもねえ」
その言葉には引っかかりましたが、私は何も言い返しませんでした。
工務店の担当者が返した言葉
やがて家が完成し、施主の一家が引っ越してきました。
しかし、引っ越しの挨拶はありませんでした。
朝、道で顔を合わせても、私が会釈をすると、相手は顔をそむけて通り過ぎます。
あの件をまだ気にしているのかもしれません。
そんなある日の昼、隣家の点検に、以前の工務店の担当者が来ていました。
私はちょうど自宅の門の前で、植木に水をやっていたところです。
すると、隣家の前にいた施主と担当者の会話が聞こえてきました。
「そういえば、あのポンプの件だけどさ。結局、余計にお金がかかったよね」
「そうですね。ポンプを設置することになりましたから」
「お隣が通してくれれば、いらなかったんだけどなあ」
施主はそう言いながら、ちらりと私のほうを見ました。
聞こえているのは分かっているはずです。
すると、担当者が落ち着いた口調で答えました。
「ただ、あれはお隣の敷地を使わせていただくお願いでしたからね」
「まあ、そうだけど…」
「ポンプを使う方法も最初からご案内していましたし、お隣の敷地を使う話ですから、断られても仕方ないですよ」
施主は少し黙ってから、
「…まあ、そうだね」
と短く返しました。
担当者もそれ以上は何も言わず、話はそこで終わりました。
ちょうど犬の散歩で通りかかった人が、ちらりとこちらを見て通り過ぎていきました。
施主は一度私のほうを見ましたが、それ以上何も言いませんでした。
それ以来、少なくとも私の前で、ポンプ代について不満を言われることはなくなりました。
今でも朝の道ですれ違うと、相手は目を合わせずに通り過ぎます。特に親しくなったわけではありません。
それでも、工務店の担当者があの場で事情を説明してくれたことで、私の気持ちはずいぶん楽になりました。
最近は、門の前で郵便受けを確認するときも、以前ほど隣の家を気にせずに済んでいます。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














