「このスープ、塩が足りないぞ」と毎晩一口目で調味料を足す夫。私がスプーンを置いて向き直った、静まり返った食卓
一口目で変わる夕食のスープ
夫は一口食べるなり、食卓の調味料へ手を伸ばしました
夕方は、我が家でいちばん忙しい時間です。
上の子の宿題に目を通し、下の子の様子を見ながら、鍋の火を弱めて味を整えます。
それでも夕食だけは家族そろって食べたくて、私は毎晩この時間をやりくりしていました。
その夜の食卓も、いつもと同じでした。私と夫は並んで席に着き、向かいの席では子どもたちがスプーンを持って待っています。
具だくさんのスープを、夫が先に一口運びました。夫は昔、調理学校に通っていた人です。
夫はいつも、最初の一口で同じことを言います。
「このスープ、塩が足りないぞ。」
私の返事を待たず、夫は食卓の端にある調味料の容器へ手を伸ばしました。
夫は調理学校で習った味付けだと言って塩を足し、私は黙りました
夫は容器を傾けて自分の皿に何度か振り、スプーンでかき混ぜます。
「調理学校で習った味付けだ。」
専門の勉強をした人にそう言われると、私は言い返す言葉が見つかりません。
子どもたちの前で言い合いもしたくなく、いつも黙ってうなずくだけでした。
気がつけば、夫が何も足さずにスープを食べ終えたのは、もう何か月も前のことです。
私が味を見て整えたスープに、夫は毎晩決まって塩を足していました。
自分の好みに合わせること自体が嫌なのではありません。ただ、毎回のように味が足りないと言われることが、私にはつらかったのです。
子どもたちは、そんな夫の手元を黙って見ていました。
スプーンを置いた私
私がスプーンを置いて告げると、夫は黙り込みました
その夜も、子どもたちはまだスープに手を付けず、夫の手元と私の顔を交互に見ていました。
毎晩少しずつ積もっていたものが、そこで一気にあふれました。
私はスプーンを置き、体ごと夫のほうを向いて、まっすぐ目を見ました。夫は目を上げて、私を見返しました。
「あなたの食事は、あなたが用意して。」
「子どもと私は、実家で食べるよ。」
声は大きくありませんでしたが、迷いはありませんでした。
これ以上、食事のたびに夫の顔色をうかがいたくなかったのです。言い終えると、食卓から音が消えました。
翌日から、夫が自分で台所に立つようになりました
夫は何か言おうとして、スプーンを持つ手を止め、自分の皿を見つめました。
声を荒らげることも、言い返すこともありません。
子どもたちが不安そうにこちらを見ていることにも気づいたのか、夫は気まずそうに目を伏せました。
翌日の昼、仕事中の私に夫から短い連絡が届きました。
『今夜から夕飯は俺の担当にする。味のことは、もう言わない』。
私は少し迷いました。
実家で夕食をとるつもりでいましたが、自分から料理をすると言い出した夫の様子を、一度見てみようと思ったのです。
その夜、帰宅すると、台所には本当に夫が立っていました。
普段はほとんど料理をしない夫ですが、昔の経験を思い出しながら、慣れない様子で夕食を作っていました。食卓に出されたのは、具だくさんのスープでした。
「今夜は俺が作った。味、薄くないかな?」
夫は身を乗り出して、私がスプーンを口に運ぶのを見つめています。
「ちゃんと、おいしいよ。」
夫は小さく息を吐きました。その晩は食卓の片づけまで夫が引き受け、私は子どもたちの宿題の続きを、久しぶりに最後まで一緒に見られました。
夫の態度がこれからも続くかは分かりません。それでも、自分の気持ちをはっきり伝えたことで、我が家の食卓は少しずつ変わり始めたように感じました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














