「これ、私が止めました」4年間、地味な仕事ばかり続けてきた日々。だが、数字のミスを見つけた私に告げた、上司の言葉に胸が熱くなった
月末の画面に走った違和感
夕方の事務所で、私は出力されたばかりの一覧をじっと見ていました。
40代、勤続4年。
任されていたのは伝票や顧客データの突き合わせといった地味な作業ですが、毎月この処理を回してきた目に、その日の数字は明らかに変だったんです。
桁がひとつ、ずれている。
関係部署はもう退勤時間です。
直属の課長は会議でフロアにいません。
深く息を吐いて、画面を辿り直すことにしました。
原因はすぐに見えてきました。先週走ったシステム改修で、連携先のフォーマット設定が一部書き換わっていたんです。
誰も気づかないまま月末処理が動いていて、出力結果だけが少しだけ歪んでいた。
同じ作業を毎月繰り返していなければ、たぶん誰も拾えなかった種類のズレです。
放っておけば、次の請求書に直撃する金額でした。
社外に出てしまえば、訂正連絡も信用問題も全部こちらに跳ね返ってきます。気づいた以上、自分が止めるしかない場面でした。
いつもクールな課長から漏れた本音
残業届を出し、関係先に連絡を入れ、自分の判断で修正を組み直しました。
終わったのは深夜近く。
家に帰る道は、緊張がほどけてただ眠かった記憶があります。
翌朝、出社してすぐ課長のデスクへ向かい、A4一枚にまとめた経緯と対処を差し出しました。
「これ、私が止めました」
そう一言だけ添えて、判断を仰ぐつもりでした。
勝手に動くなと言われる可能性も、半分は覚悟していたんです。
課長は、いつも通り表情を変えずに紙を読み進めました。眼鏡の奥の目だけが、文字を追うたびに少し動いている。読み終えて、ふっと顔を上げたんです。
「君、よく気づいたね」
そして、独り言のように一言が続きました。
「地味な仕事ばっかりお願いしてたけど、ちゃんと見えてるのは君だけだったよ」
4年、ほとんど褒められたことがなかった人でした。
それが、出社直後のフロアで、私だけに向けて漏らされた本音。
その日の昼休み、課長は通りがかりにもう一度、こちらの机の前で立ち止まりました。
言葉はなくて、ただ軽く肩を叩いていっただけです。でも、伝わるものはちゃんとありました。
派手な成果は何もない月でした。表彰されるわけでもなければ、給料が上がるわけでもありません。
それでも、見ていてくれた人がちゃんといた。地味な4年が、その朝、自分の中で意味を持って立ち上がる感覚があったんです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














